シャープ、戴社長のリストラに高まる緊張 "信賞必罰"の人事に幹部も社員も戦々恐々
シャープ旧本社のある大阪・西田辺駅から徒歩1分。築30年を超えるシャープ社員寮で、一般社員と一つ屋根の下、新社長の戴正呉(たいせいご)(65)は暮らしている。
8月12日に自らが副総裁を務める台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを買収して約1カ月。子会社化(出資比率66%)したシャープについて、「金持ちの息子みたいな社風」と酷評した戴だが、赤字会社の一員のあるべき姿を“身をもって”示しているようだ。
戴が新社長に就任して以降、シャープの内部は徐々に変わりつつある。
「買収完了前、シャープの一部門が中国・深圳に移る選択肢を提示されたが、今はその話はない。(7000人削減との観測もあったが)人員削減も現状では実施されず、ライン長が台湾人になってもいない。ドラスチックな改革は思ったより進んでいない印象だ」(シャープ社員)という。「シャープは引き続き独立した企業」と戴は繰り返しており、社員には一定程度配慮しているようである。
給料、賃料、出張代まで削減
だが人員以外の合理化は徹底している。自分のミッションを「短期的には一日も早い黒字化」とし、コスト意識を大幅に高めるよう、全社員向けメッセージで通達。事業部長以上への説明会では膨大なコスト削減項目を掲げた。
この1カ月でもコストカットは広範に及ぶ。テナント料削減を狙い、東京本社は12フロアを3フロアに縮小したほか、千葉・幕張の自社ビルへの移転を始めた。研究開発はマネタイズを念頭に絞り込む方針へと変更。中国出張の際には鴻海の宿泊施設を利用させるほどやり方が細かい。
「退職金が2017年から3割減になるとのうわさもある。今後の減額は仕方ないとしても、これまでの積み立て分まで減らされるのは納得できない。2%の給与カットを廃止するくらいでは賄えない」(別のシャープ社員)と不満の声も聞かれ、社内の士気は低くなりがちだ。
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