OPECが環境に貢献? 高価格が暗示するもの−−ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

昨今の1次産品の価格急騰は、多くの政治家が口をつぐんでいる、現代社会の二つの実態をあらわにしている。第一は世界の資源には限りがあり、アジアをはじめ世界の何十億の人々が貧困から逃れようとすれば、欧米の消費者はその代価を負担しなければならないという厳然たる事実である。第二は、市場経済がもたらした価格高騰は、欧米列強が20世紀に繰り返してきた戦争よりも資源配分の手段としてははるかに優れているということだ。

米国のバイオ燃料開発に対する支援策が、1次産品の価格高騰に対する正しい対処法でないことは明らかだ。ブッシュ政権は燃料価格の値上がりはエネルギーの節約とイノベーションを進める最善の方法であることを認めていない。むしろ、農家に巨額の補助金を与えることで、バイオエネルギー生産のための穀物を育成する政策を打ち出している。この政策は、大量の水と農地を必要とするため、極めて非効率である事実をブッシュ政権は無視している。

膨大な農地をエネルギー生産のために転用することは、小麦などの穀物の価格を上昇させることになる。たとえその意図がよかったとしても、多くの国で食料をめぐって暴動が起こっている時代にあって、そうした発想は間違いであることを認めるべきである。

間違った方向に向かった動きがもう一つある。それは最近共和党のマケインと民主党のクリントンという2人の大統領候補が提案した、一時的にガソリン税を免除する政策である。低所得層が燃料価格の上昇に対応するのを支援するためであると、両候補は声高に主張しているが、それは正しい政策ではない。ガソリン税は引き下げるのではなく、引き上げるべきである。その意味で、OPEC(石油輸出国機構)は原油価格を高く維持することで、環境面で持続不可能な消費主義時代の延命を図っている欧米の政治家よりも、環境保全に貢献しているのである。

もちろん価格上昇は原油だけではなく、金属から食料、木材に至るすべての1次産品に及んでいる。多くの1次産品の価格は過去数年で2倍以上に上昇している。原油価格は5年間でほぼ4倍上昇している。その主な要因は、世界経済のブームがかつてないほど力強く、長期かつ広範に起こっていることである。

アジアは世界経済をリードしてきたが、過去5年間を見ればラテンアメリカとアフリカが最も高い成長を享受してきた。1次産品の不足は、世界経済の長期にわたる成長の後半になって表面化してきた。

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