女性には「美人」と「美人予備軍」しかいない 最大公約数のモテを目指しても幸せはない
スー:それでもどうしても自分らしくない服を着なきゃいけないことってありました?
野宮:ありますよ。ハマトラとか、コンサバは全部ダメでした。デビュー前の1年間、OLをやってたんですけど、ニューウェーブの時代だったからミニスカートで会社に行ってたんですね。ある日、富士通にお遣いに行けと言われ、ニューウェーブファッションじゃまずいなと思って、だいたいサイズが同じくらいのハマトラファッションの女の子と服を交換してもらったんです。
それを着て富士通に行ったんですけど、自分が自分じゃないみたいだし、オバサンみたいだし、まったくしっくりこなかった。あと、私は息子がいるので、父母会や授業参加に行かなきゃいけないんですけど、そういう場所に何を着ていけばいいのかはいまだにわからないです。
スー:授業参観に野宮真貴がいるってすごい(笑)。
野宮:自分が持っている服のなかから紺や黒の服を探して、着ていくんですけど、全身がそうなっちゃうと自分が自分でなくなってしまうから、どこかに自分らしさを残そうとすると、バランスがおかしくなってしまう。なかなか難しい課題。「授業参観に来ている母親」のコスプレのつもりで、なるべく目立たないようにして乗り切ってます(苦笑)。
スー:なんでも着こなせそうですけど、苦手なファッションはやっぱりあるんですね。
モテファッションをすれば幸せになれるか
スー:今、おいくつなんでしたっけ?
野宮:56歳。
スー:私たち世代も、野宮さん世代も、きれいな人ってたくさんいますけど、そういう人って若い頃からきれいなんですよ。結局、厳選メンバーが山を登っていって、歳を重ねるにつれ何人も脱落して、残った少人数が「きれいな人」と評価されている。その点、野宮さんは時間をかけて自分のスタイルを獲得していったタイプだと思うんです。男も女も、最大公約数にモテる方向にシフトしがちですけど、そういう時期はありましたか?
野宮:10~20代は特に、結婚をゴールにすると、モテファッションやモテメイクになりがちですよね。でも、私の場合は、聴く音楽によって服装は変わっても、付き合う男に合わせてファッションが変わったことはなかったな。
スー:モテファッションにトライしたことはありますか?
野宮:なかったです。服のほうが好きでした。
スー:モテよりも服(笑)。世間のモテという尺度に惑わされなかったのはなぜでしょう?
野宮:やっぱり、自分の好きなことを追求していたからじゃないかな。万人にモテてもしょうがないもの。やっぱり、話が合う人と仲良くなりたいし。高校生のとき、ロックバンドのKISSを好きになってコピーバンドをやったんです。衣装を自分でつくって、メイクもヘアも真似して。まず、普通の男の子にはモテないですよね(笑)。
スー:ですよね(笑)。