米国留学生の3分の1が中国人である理由 「わが子にメッキをしたい」親世代の思い

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やがて彼らも親になった。すると、経済条件も以前に比べてはるかによくなり、ビザ条件も緩和されたため、遠い存在だった「留学」が現実のものになってきたことに気づく。愛情と希望のすべてを注ぐ一人っ子の子供に、自分が果たせなかった欧米への留学をさせたがるのは自然である。

昔の中国では「留洋(留学)」「洋学生(留学生)」のように、「留」の代わりに「洋」をつけていた。「洋」をつけると海外(先進国)と関係があるように見えて、別格という感じがするからだ。今の中国では留学は、「鍍金(メッキ)」と呼ばれている。海外に渡って先端的な知識を学び、おしゃれなライフスタイルを体験し、視野を広げれば、いくら地方出身の泥臭い成り金の子供でも「洋」でメッキされて、「ピカピカ」になって帰ってくるからだ。欧米に対するあこがれを抱えている親は子供をメッキしたいのだ。

米国の3流大学でも中国の大学よりはマシ?

もちろん、中国人にとって大事なメンツも留学の大きな促進要因だ。特に都市部に住んでいる親の「圏子(チェンズ。同程度の経済力や趣味・嗜好、ライフスタイル、考え方を持っていて場合によって助け合う、関係性が深い人間同士の集まり)」は重要な要素だ。

もしも北京大や清華大に行った息子が、留学せずに国内で進学する、あるいは国内で就職すると言ったら、「こんなに優秀な子供になぜ『メッキ』しないの?」「視野が広がるし、いちばんの先進国で暮らせるから、三流の米国大学でも国内よりずっとマシだよ!」と言われるだろう。「圏子」の人の子供が全員留学したら、自分の子供も行かせないとメンツが立たないと思うので、留学させたいと思う親はどんどん増えていく。

つまり、この3つ目の留学ブームを作ったのは、彼らの親世代である。

日本人からみると「自分の夢を子供に押し付けるのはどうなんだろう」「大学1年間の学費だけで数万米ドルなのに、経済的に大丈夫なのか」という疑問もあるだろうが、実は、中国では海外留学はとても現実的な選択肢なのだ。

中国は人口に対する教育資源が非常に少なく、よい大学のある地域も限定されている。よい大学を出ないと勝ち組になれる確率が極めて低いので、先述のドラマの中の母親のように、子供によい学校に行かせることほど重要なことはない。入学は基本的に戸籍の登録地で決まるので、教育熱心な親は、小学校から高校までの間も積極的に引っ越して、学校近辺のマンション(「学区房」と呼ばれている)を購入する。

このために、築数十年でぼろぼろのマンションでも、当たり前のように1平方メートル100~150万円で売られている。レベルの高い学校の近くであれば、値下がりもしない。60平方メートルの小さな部屋でも(中国人にとって60平方メートルは小さいと言える)6000万円だ。その一方で、米国大学院の留学は、2年間で1000万円もあれば十分だ。不動産投資の目的がなければ、わざわざ「学区房」を買わなくて済むので、欧米留学に行かせたほうが現実的に「お得」なのだ。

すでに述べたように中国国内の競争は非常に激しい。たとえば青島ビールの故郷である山東省では、2015年大学受験申込者数は約70万人もいるのに、そのうち北京大学に入ることができたのはわずか151人だった。この、たった0.02%という確率が意味するもの。それは、ほぼ「不可能」ということだ。

その一方で、海外留学に目を向ければ、選択肢は中国での大学受験よりはるかに幅広い。英語試験さえクリアできれば、大学ごとに選考基準があるため、よい留学仲介業者と力を合わせれば、欧米の名門大学に入ることも夢ではない。留学は中国国内の受験制度からはじかれた若者に、世界という広い舞台と希望を与えている。

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