頭金ゼロで不動産投資を始めた人が見る地獄 ローンで大部分を賄うのは綱渡りの運用だ

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「投資マンションを買っても住宅ローンは組めます」。投資マンションを勧誘する業者の中には、このようなセールストークをしている営業マンもいると聞く。しかし、このことを銀行に聞いてみると、投資物件が赤字を出していると住宅ローンの審査は難しいと名言している。

投資は事業。事業で儲かっていないのに、さらに住宅ローンを借りて住宅を建てるというのは、銀行としてはあり得ない話なわけだ。以前、投資物件を持っていた方からの住宅ローンの相談案件で、銀行に頼み込んで自己居住用の住宅ローンを通してもらったケースがあった。それはたまたま投資物件がプラスマイナスゼロの収支、しかも奥さんの収入を合算することができたからでOKになったが「投資物件が赤字だったら融資は難しかった」と。

リスクヘッジをどうするか

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自己資金よりも大きな借り入れをして投資を行うという行為には、それなりのリスクがある。したがって、リスクヘッジをどうするか、その算段はしておいたほうがいい。レバレッジをかけて投資するなら、早めに借入金を返済していくことが必要だろう。

以前、こんな相談事例があった。

投資マンションで1戸では収益が見込めないと思っていたら、「2戸目を買いましょう」と勧められてしまった。2戸目を購入すると数字の上でトントンくらいになり始めた。「今思うと、ここで留まればよかった」と相談者は話す。

その後、ちょっと欲が出てしまい「この調子で攻めよう」と3戸目を買ってしまった。自分ではトータルで見るとトントンか儲かっているように見えたそうだ。

将来の見通しを相談したいと私のところを訪れ、物件各々の収支をよく精査してみるとマイナスであることが判明。その結果、自己資金30万円で負債総額は7000万円などというとんでもない状態になっていた。

つまり、レバレッジは熟知して使わないとメリットも大きい代わりに反面デメリットも小さくはないということは理解しておくべきだろう。現金で返済の原資が潤沢にあればいいが、資金がないのにフルローンで突っ走ると厳しい状況に追い込まれてしまう場合がある。

レバレッジの考え方を使って収益を上げる方法は、不動産投資のプロでなければ難しい。資金が潤沢にある人にとっては、レバレッジを効かせた不動産投資がいい場合もある。それは何かあっても払える余裕、つまり余剰資金がある人だけができること。

彼らは投資先が不動産だけではなく、現金、債券や株式など、リスク分散しているからこそ借りても儲かるわけ。金利が低いからあえてローンで借りて購入し、早期に利益を確定させてローンを完済してしまう、あるいは早期売却で手仕舞いする。

お金があるが、金利が低いからあえてローンを利用するプロの投資家と、単に自己資金がないからフルローンで投資物件を購入するサラリーマンが同じ土俵で勝負しても勝ち目はないと言える。

不動産投資は株式のように単純な売り買いだけで成立している投資ではない。物件を人に貸し、その人からの払われる賃料を原資にして運用する。同じ物件は2つとないため均質性に乏しく、人に貸すという特異性、換金性の悪さなども含めて、特殊な投資手段といってもいいだろう。サラリーマンのような素人が簡単に儲けられるような投資ではない。

寺岡 孝 アネシスプランニング代表取締役/住宅コンサルタント

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てらおか たかし / Takashi Teraoka

アネシスプランニング代表取締役。住宅コンサルタント。住宅セカンドオピニオン。

1960年東京都生まれ。大手ハウスメーカーに勤務した後、2006年にアネシスプランニングを設立。住宅の建築や不動産購入などのあらゆる場面において、顧客を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行っている。

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