「伝説の教師」から学んだ、最強の英語勉強法 日本の英語教育を変えるキーパーソン 石渡誠(中)

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安河内:英語の達人の先生の中には、中学の教科書の朗唱(暗唱)を勧める方が多いですね。私の知り合いでも、スピーチがお上手な方に多いです。

石渡:中学3年間の教科書すべての朗唱を、私は浪人時代にしたわけですが、当時の自分のレベルにピッタリ当てはまりましたね。ベース作りに最適でした。

ただ、何度も言うように、基礎をやりながら、ハイレベルのものを同時にやることが大切だったと思っています。先ほど「ケネディの演説を朗唱するときに難しいとは思わなかったのか?」と質問受けましたが、最初はホントに難しかった。全然わからないし、頭に入ってこないし、正直泣きそうでした(笑)。

歌のように覚えるといっても、そうとう時間がかかりました。それをやったことで英語力がついたと今では実感できますが、当時はそんな実感は皆無でした。ただチャレンジとしてはやりがいがありましたね。中学の教科書の朗唱が簡単だと感じた裏には、ケネディの演説に触れていた影響も大きかったはずです。

感情的な理解が、知的な理解につながる

安河内:レベルが低い話なのですが、私は韓国語が好きで勉強しているんです。それで、韓国語のバラードの曲を結構歌えるんですけれど、それは全部音で覚えているんですね。それもやりつつ、教科書の勉強もすると、どこかでその2つがつながって、文としてintegrate(統合)される瞬間があるように思うんです。お話を伺っていてそのことをふと思い出しました。わからないものを朗唱することは意味がないと考えがちですが、シナジー効果を生んでいくのでしょうね。

石渡:言葉というは何語であっても、もともとわからないものを受け入れるところから始まっていきますよね。松本博士の言葉を借りれば「人間の言葉は、感情的な理解から知的な理解につながっていく」ということです。 最初は何かはっきりわからないけれども、音を通じて「こんなことを言っているのかな」と感覚的にとらえていく。そこからもっと細かい理解に入っていくのです。

ところが日本人は英語に関しては、感情的な理解は疎外して知的な理解だけで入ろうとするのです。そして、知的な部分だけで言葉が理解できると勘違いしてしまうのです。でも言葉はもともとわからないものをわかるようになるプロセスを通じて、しっかり理解できるようになるものです。心を通して、頭を通してという順番がある訳ですね。

ですから、まず歌のように感じるところから入っていくのは、言語学習の第一歩として最適なのではないでしょうか。

安河内:専門学校時代のお話だけでだいぶ時間を費やしてしまいましたが、英語学習のヒントになる話が満載で、とても興味深いものでした。ありがとうございます。後半は教師という立場から、現在の学校の英語教育の現状をどう変えていけばいいとお考えか、伺いたいと思っていますので、引き続きよろしくお願います。読者の皆様もお楽しみに。

(構成:山本航)

安河内 哲也 東進ハイスクール・東進ビジネススクール講師

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やすこうち・てつや / Tetsuya Yasukochi

1967年福岡県生まれ。上智大学卒。予備校講師、教育関連機関での講演などで実用英語教育普及に従事。著書に『子どもの英語力がグンと伸びる最強の学習』(扶桑社BOOKS)など。

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