32歳高年収女子、中途半端な試みは失敗した 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<9>
が、惑わされてはいけない。自分は決めたのだ。「あ、いえ・・・。私こそ、何度も連絡してしまって…。ちょっと他の予定があったので、別の日に変えてもらおうと思って、何度もかけてしまったんです」
杏子は決意した通り、モゴモゴと、慣れない作り話を口にした。きっと正木は焦り、杏子にひれ伏してデートを懇願するであろう。
「えっ?俺が連絡しなかったから…?そっかぁ、じゃあ、今日は会えないのかぁ。残念だなぁ。俺、今日を楽しみに夜勤頑張ったんだけどなぁ。でも、俺が悪いし、仕方ないかぁ」
正木にアッサリと引き下がられそうになり、杏子は焦る。「あ...、で、でも!だ、大丈夫です。まだ決めていなかったので。今夜、予定通りで大丈夫です」。予想外の展開に、咄嗟に下手なセリフを吐いてしまった。直人の呆れ顔が、頭に浮かぶ。
「え、本当に?大丈夫なの?やったー。じゃあ、場所はどこにしようか?」。一瞬下手に出たものの、杏子はまたしても顔が歪む。正木は前回の電話で、「神楽坂に行こう」と言っていたのだ。やはり、まだ店も決めていないのだ。
またしてもモヤモヤ感!
「えっと...?神楽坂って、言ってませんでした?」。杏子は苛立つ気持ちを抑え、なるべく柔らかい声で聞き返す。
「あ、そうだったっけ?神楽坂なら、俺、家から近いから助かるよー。じゃあ、19時くらいに神楽坂で待ち合せでいい?お店は決めておくね」。そうして、正木は電話を切った。
またしても、モヤモヤ感が杏子の心を巣食う。神楽坂を指定したのは、自分の家から近いからって理由だったの?
「自分から電話をしない」「男には自分の元まで会いに来させる」。これらも「ルールズ」の教訓の一部であったが、杏子は既に、違反だらけだ。それに、お店が決まってないんじゃ、服装も決めにくいじゃないの。
そもそも、正木は初デートに相応しい店を探し、予約を取ってくれるのだろうか。土曜の夜に、店を探して難民化するなんて展開にはならないだろうか。モヤモヤ感は怒りに変わりかけ、杏子はまたしてもスマホを手に取ったが、そこで「男に振り回されるな」という直人の言葉が頭に浮かび、ハッと我に返る。
私は、振り回されてなんかいないわ!
杏子はあれこれと考えるのはやめ、デートの前に、メディテーションヨガ(瞑想ヨガ)へ行くことに決めた。
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