強硬姿勢の裏で、北朝鮮が探る経済開放

自国経済の立て直しに本腰

過去の改革は失敗続き

実権を握って1年が過ぎた金第1書記は、父の「遺訓」とされる経済、特に軽工業を発展させ市民生活を向上させるという約束を、国民への公約として掲げてきた。その脈絡から、今回の措置は一時的な痛みは伴うものの、変動相場制の導入や開発区の拡大は目標達成に役立つと判断したようだ。

北朝鮮には欧州や中国をはじめとした外資企業がすでに進出している。携帯電話などの移動通信事業を行っている「高麗リンク」を合弁で設立したエジプトのオラスコム社がその代表格だ。同社の進出で北朝鮮では携帯電話が普及した。現在全国で150万人以上が加入し、平壌では誰もが携帯電話を手にするようになった。

だが、「公定レートと闇レートの乖離が激しく、また変動幅も極端にブレるため、進出企業の収益構造が不安定になるのがネックだった」(前出の統一省関係者)。そこで、外貨を持つ企業や個人にはすべて「外貨口座」を開設させると同時に、闇レートを完全に適用し、外国企業にとって安定した事業環境を作り出そうという意図だ。

現実を変革しようとする北朝鮮。対外開放が進み国際社会に近づく契機になれば、それは好ましい。だが、北朝鮮はこの10年間、間欠泉のように経済改革を行ったが、いずれも失敗に終わっている。

公定価格と賃金を大幅に引き上げた2002年の「7・1措置」と呼ばれる経済改善措置や09年末に実施された「貨幣改革」(デノミ政策)は、北朝鮮の経済を現実のものに合わせようとする改革だった。しかし、いわばタンス預金が没収される国民の反発と急激な物価高を招き、国内政治の対立も重なって結局、中途半端に終わっている。

経済力に乏しい北朝鮮を発展させるためには、資金や資材などを外国から導入することが不可欠だ。変動相場制への移行はその一歩といえるが、強硬姿勢を崩さない中、どこまで本気で経済を開放する気があるのかははっきり見えない。

週刊東洋経済2013年5月11日

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