なぜエジソンはウォシュレットを作れなかった? 日本企業再生へのヒントは問題発明にあり

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中小企業がヒット商品を生み出すヒントは?

これまで研究の中で、東京近郊の町工場や中小企業を回ってきましたが、技術だけではない勝ち方があるのではないだろうか? ヒット商品を生み出している中小企業の事例を目にして、そう考えるようになりました。成功している企業は問題そのものを発明し、独自商品を開発して、新しい市場を創り出しているのです。

そこで、ひとつ事例を紹介します。レボUコップです。コップといえば、一般的に飲み口が水平になっていますが、このコップは鼻が当たる部分だけが削られています。一般の人からすると、不便ですが、ある特定の方にとっては画期的なコップなのです。障害を持たれている方、高齢の方にとっては、ジュースなどを飲む際、首を曲げなくても飲み干すことができるのです。

皆さんに振り返ってもらいたいのです。今の説明を聞かないうちは、このコップは価値がない、不便だと感じられたかもしれません。でも、どんな人が困っていて、どう便利なのかを聞き、皆さんの認識が変わった途端、価値を感じていただけたのではないでしょうか。モノの中に価値があると思っているかもしれませんが、価値とは本当はわれわれの認識に依存する現象なのです。

どのような問題ととらえ、解釈するかは、その人の知識や経験、教養によって変わります。得てして、問題は発見されると思われていますが、問題をどのように定義するか、その設定自体は、アートであり、発明であるわけです。

もうひとつ面白い事例をお話しします。東京の墨田区に日本の水泳帽のシェア9割を持つフットマーク(旧・磯部商店)という会社があります。1970年ごろ、社員8人規模の会社だった当時、布製のおむつカバーを作っていました。しかし、その頃、アメリカのP&Gからパンパースが入ってきたため、使う人が減ってしまった。そこで、これまでの技術を別のものにできないかと考えられました。

ちょうどその頃、第2次ベビーブームに合わせ、全国の小中学校にプールを造っていく政策が発表されました。これを聞き、今のおむつカバーの技術を生かして、水泳帽を作ったらどうだろう?と考えました。ところが、その時代に水泳帽の需要がなかった。水泳帽をかぶる習慣は髪の長い女性か、水球の選手など一部にしかなかったのです。それでも、もしその習慣を作れれば、需要が発生するだろうと考えたのです。

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