冒険で体得した51%に懸ける決断力 モンベル会長 辰野勇

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一歩踏み出した後は最善を尽くすのみ

登山家というのは実は怖がりで、用心深い。山に行く前に想像力を働かせ、先々に起こりうるあらゆる事態に対する準備をする。そのうえで、フィールドに一歩足を踏み出します。その先で何かが起こったとしても、ああすればよかったとか考えている余裕はありません。前を向いて最善を尽くすしかないのです。時間を戻すことはできないのですから。

3人の仲間とともに立ち上げたモンベルは、創業の翌年に発売した画期的なダクロン素材の寝袋の大ヒットから大きな組織へと成長していく。今や、モンベルの従業員数は660人に増え、4月18日にオープンした東京スクエアガーデンに都内最大級となる旗艦店を出店するなど、店舗数も国内で79店(5月現在)を誇る。しかし、辰野氏はこれまでの成長過程にはまったく苦労はなかったと振り返る。

アイガー北壁は1800メートルの垂直に近い壁で、他人から見ると、これを登ることは極めて困難に見えるでしょう。しかし、実際に登っている人間は手が伸びるところ、足が届くところを登ることを積み重ねていくだけ。1メートル登るのも、1800メートル登るのも、やっている動作は一緒です。

経営もこれと同じです。突然、1000人の会社のトップになれと言われて経験がなかったら、あたふたするかもしれませんけどね。3人でモンベルを立ち上げて、だんだん従業員が増え、売り上げも増えてきた。自分で作ってきた道の延長線上ですから、規模の大小があってもあまり変わりませんね。

自分で選んだ道に苦労はない

経営をしていく中で、苦労を感じたこともありません。登山でも何十キロも荷物を担いで、雪山では雪の中をのたうち回って山頂を目指します。なんてばかげたことをやっているのだろう、大変な苦労をしていると思われるかもしれませんが、本人は自分で選んでいる道ですから、それすらも楽しんでいるのです。

 (撮影:ヒラオカスタジオ)

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