他方、ごく普通の一般的な家庭と明らかに異なる点がある。最初に気づいたのが子どもの教育に対する考え方だ。長男は大学で米国に留学。英語はもちろん中国語もそれなりに話せるし、世界中に友人が散らばっている。1年間だけ海外留学する、という日本の大学生によくある話ではなく、入学そのものが米国の大学でしか考えていなかったという。
「日本で大学進学するともっとも学んだほうがいい時期に遊んじゃうからね」という榎本さんの一言に、おカネをかけるツボを心得ている富裕層独特の視野を感じる。このような開明的な考え方でお子さんには独立した生き方を促す。たとえばこのご家族からの悩み相談で時折思い出すのが「いやー、息子の就職が厳しいみたいでさ、こんなことやりたいって言っているんだけど、何かいいツテないかな?」という話だ。その実、求めていることは、単なる紹介であって、すべて本人に行動や判断は任せるという。子育てに関しては終始一貫して「独立心を促す」ことを重視してきたそうだ。
相続に関しての考え方もいたってシンプル。「使いきれない可能性もあるが相続税が高いとはいえ、いくばくかは残せるだろうから、子供は子供で自分で頑張っていけばいい」。要するに節税と呼ばれるものにそれほど関心がない……ようにみえる。
「ようにみえる」としたのには理由がある。その理由とはこのご家族は「おカネを現金で持たない」ことを徹底していることだ。このあたりも富裕層独特の感覚といえる。「おカネには働いてもらう」と言い、逆に言えば「預貯金」という言葉に鈍いのだ。
超富裕層の投資基準
資産運用に関しては、「購入するのは港区の不動産と決めている。収入が見えやすいのがいちばんの理由だ。散歩ついでに家の近くのビルを物色して安くなった時期に一気に購入して持ち続ける、それが安定的な利回りを生み出す、という投資基準。「目の届く範囲で確実な案件」のみに投資するとなるとやはり不動産ということになるらしい。
榎本さんがみずからの資産運用方針を語ってくれたことがある。
「自分が理解できないものに投資するような年齢でもないからね。昔、関所というのがあっただろう。あのイメージだ。そのオーナーになれば毎日収入がある。高額なものでも構わない、収入も多くなるはずだから。あ、割高なのはダメよ、俺のヨメさん一発で見抜くから」
これは、世界的に名を馳せる投資家であるピーター・リンチやウォーレン・バフェットが言っていることととても近い。退職金3000万円を当時の取引先の株式に換えて、一度も売買していないのも、「安定的なものを安く買い、ずっと持ち続ける」というバリュー投資そのものなのだ。目立って動き回らないし、結局目立たない。榎本さんのような超富裕層が、あなたのすぐとなりにもいるはずだ。
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