失速するマンション市場 積み上がる完成在庫、都心一等地でも異変

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契約率7割未満、在庫は1万戸以上

不動産経済研究所によると、首都圏マンションの契約率(=新規販売戸数に対する契約戸数)が、好不調の分かれ目である70%を割り込んだのは07年8月の65・6%から。以来、「直近の本年4月まで9カ月連続で70%を割り込んだ。これはバブル崩壊後の1990年9月から92年2月まで18カ月連続で70%を割り込んで以来の厳しい状況だ」(福田秋生企画調査部長)。また、販売物件の在庫数も07年12月以降、4月まで5カ月連続で1万戸超え。これは02年10月から03年2月までの5カ月と並ぶが、今や可能性が濃厚な6カ月連続となると95年の9カ月連続以来ということになる。いずれにしても、現在のマンションの販売環境はバブル崩壊直後に次ぐ逆風下にある。

 売れ行き不振の最大の原因とされているのが販売単価の上昇。不動産経済研究所の調査でも、首都圏のマンションの平均販売価格は、昨年はその前の年に比べ10%アップの4644万円。これが今年4月には5344万円まで上昇している。値上がり理由について業界関係者は「昨年までは用地代や建築費のアップを単純に販売価格に上乗せして『新価格』『新々価格』と言って売ろうとしていた」と言う。

しかし、5月に入って続々発表されるマンション専業の09年3月期業績は大手から中堅まで軒並み減益予想だ。理由は販売価格のダウンに加え資材費や労務費などの建築原価アップというダブルパンチのためだ。ある大手企業の担当者は「資材価格などの上昇は06年比較で3割高になったが、とても今の環境では販売価格に転嫁できる状況ではない」と嘆く。また別の販売担当者も「値下げを始めている。しかし、なかなか底が見えないため不安だ」としきりに首をかしげる。

都心一等地のタワーマンションでさえ販売に苦戦している中、郊外のマンションは軒並み厳しい販売環境にある。しかし、郊外が全滅なのかといえばそうではない。同じ沿線であっても価格、立地などにより販売が好調なマンションもある。「現在のマンション市況を見ていると、どこの地域がすべて悪いということはない。個々のマンションごとに、立地の魅力度が異なるため、郊外物件でも売れ行きに差が出ている」(東京カンテイ市場調査部・中山登志朗上席主任研究員)。

たとえば、新線の開業でマンション開発が一気に進んだつくばエクスプレス沿線。茨城県内に入ると、車窓から見える沿線風景はどこも造成地と水田の連続。依然、未開発地域も多く見られる。しかし、まったくの新開地だけに現在建設中のマンションのほとんどが駅前立地だ。それでも駅からの距離や商業施設などの集積度によって明暗が分かれている。

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