失速するマンション市場 積み上がる完成在庫、都心一等地でも異変
マンション販売の変調が続いている。タワーマンションが集積する東京都心の臨海地区、中央区勝どき6丁目で今年1月に竣工したオリックス不動産主体の「THE TOKYO TOWERS」。マンションでは日本最高の58階建てが売り物のツインタワーだ。2005年の分譲時には超人気を誇ったこのツインタワーは、竣工からまだ日が浅いにもかかわらず大量に売り物が出ている。
ヤフーの不動産取引サイト「ヤフー不動産」をのぞくと、同マンションは60件以上が売り物件として掲示されている。業界関係者は「05年当時に臨海部の人気を当て込んで投資目的で購入した層が、市況が厳しくなっていることに慌てて、一斉に売りに出している」と言う。が、なかなか成約に結び付かないようで、長期にわたって掲載されている情報が多い。いわば、売り気配の値付かず。投資目的のカネが流入したことが実需以上にブームを過熱させる大きな原因になっていたが、もはやこうした物件は、総じて”売り気配”。竣工前から転売に出される高級マンションも数多くある。
売り気配が続く中でも、新規のタワーマンションは次々に供給される。5月1日、住友不動産は6月下旬から分譲開始する東京・豊洲地区のタワー型マンション「シティタワーズ豊洲 ザ・ツイン」の記者向け説明会を開催した。担当の岡田時之執行役員は「販売価格は先に販売されたTHE TOYOSU TOWERと同じ水準になりました」と発言。ザ・ツインのほうが豊洲駅に近いこともあり「坪当たり300万円を超えるのでは」といった事前予想もあったが、そうはならなかった。
ザ・ツインの竣工予定は来年3月(S棟)、6月(N棟)。表のようにタワーマンションは竣工の1年半以上前に分譲を開始することが多いが、ザ・ツインは総戸数1063戸の超大型マンションながら1年を切っての分譲開始になった。「準備が遅れただけ」(岡田執行役員)と言うが、タワーマンションが乱立する豊洲での販売競争を回避したとの見方も出ている。
というのも、すぐ近くでは来年1月竣工予定の「THE TOYOSU TOWER」(三井不動産、野村不動産、三菱地所、東京建物)が昨年6月から分譲を開始しており、「この4月の第3期販売で全体の9割以上が売れた」(三井不動産担当者)と好調ぶりに自信を示す。
それに対し、ザ・ツインはどうか。ある業界関係者は「金融機関に勤めるサラリーマンが投資の色気を持って買う例が極端に減っている。現在の市況を考えると、THE TOYOSU TOWERと同じ価格水準であっても厳しいだろう」と言う。都心臨海部のタワーという人気が高い物件でも、その売れ行きが懸念されるほど、現在のマンション販売の環境は厳しくなっているのだ。