羽田空港の駐車場「空前の大混雑」という難題 2020年に向けた旅客増に対応できるのか

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羽田空港から少し離れてみてはどうか。京浜島(大井南インター近く)や浮島(羽田空港対岸の浮島インター近く)などには、いくつかの民間の駐車場業者が運営する有料駐車場があるが、これも繁忙期になると事前予約で満車になっていることも珍しくない。羽田空港に近い京浜急行空港線の「天空橋」「穴守稲荷」「大鳥居」周辺のコインパーキングもなかなか空車を見つけられない。蒲田方面や天王洲アイル方面などの有料駐車場に停めて電車やタクシーで羽田空港へ向かう手もあるが、これらは時間のロスやコスト面などであまり現実的ではない。

旅客数は今後一段と増加

問題は、羽田空港の旅客数は今後一段と増加が見込まれることだ。この秋にはこれまで深夜早朝帯(22~翌7時)にしか認められていなかった米国便が昼間帯(日中時間帯)と呼ばれる6~23時の発着で就航。これまで成田空港を利用していた旅客の一部が羽田空港に流れ、旅客が純増するシナリオが考えられる。

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事前予約もできるが早い段階で埋まってしまう

さらに、2020年の東京五輪に向けて都心上空の飛行解禁などによって、さらなる発着枠の拡大が検討されている。国際線利用者は荷物も多く、公共交通機関が運転していない深夜・早朝時間帯の発着も増えており、駐車場の需要がより拡大する可能性が高い。

国土交通省航空局首都圏空港課の担当者は東洋経済オンラインの取材に対し、「2020年に向けて羽田空港の旅客増に対応する駐車場の増設は検討事項のひとつ」と回答した。駐車場運営会社の中にも具体的な増築を検討する動きがある。

ただ、「物理的に考えて羽田空港周辺には、新たに大規模な駐車場を設置できるだけの土地がほとんどない」(首都圏空港課)。通常の平日に駐車場が極端に混雑することが少ないことも加味して、羽田空港周辺に駐車場を増設できるとしても1000~2000台規模の単位で実現するのは、かなり難しい話といえそうだ。

次の年末年始をはじめ、当面、繁忙期の大混雑は解消されないだろう。駐車場の事前予約ができないときに、飛行機に乗り遅れる可能性をできるだけ排除するなら公共交通機関を使ったほうが無難かもしれない。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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