「常識破り」の続く日本経済を読み解くカギ デフレは脱却したというが・・

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今の日本経済にはこれまでの「常識」が通用しないことがたくさんある。

8月に政府は28兆円規模の経済対策を打ち出した。しかし経済運営が成功しているかどうかを判断する代表的な指標である完全失業率は、7月に3.0%と20年以上ぶりの低い水準。経済対策は景気が悪いときに景気の安定を狙い行うものであり、これまでの常識からすれば、この景況感で政府が大型の経済対策を打ち出すことはなかっただろう。

財政再建の取り組みは影を潜め、政府債務の残高はGDP比で230%を超えた。平時にも関わらずここまで国の借金が積み上がったことは、有史以来なかった。さらに現在は国債の3割強を日銀が保有している。中央銀行の保有比率として異例な水準だ。

9月26日発売の「週刊東洋経済」では、これまでの常識では考えられない日本経済の今を「総括検証」した。日銀の新政策はどんな意味があるのか、大型経済対策は本当に必要なのか、これほどの債務を抱えていて、日本国債の暴落はないのか…。こうした疑問に迫っている。

経済統計に関するリテラシーを高める

特集では経済統計を自分で分析するコツや、最低限知っておきたい経済統計についてもじっくり解説している。経済統計は総務省統計局のホームページなどで簡単に入手できるし、イメージほど難しくない。定期的に発表される統計を定点観測すれば、経済を見る目を養うことができる。

そのためにはまず3つの指標のチェックから始めることをオススメする。全国企業短期経済観測調査(短観)、鉱工業生産指数、消費者物価指数の3つだ。

短観では大企業製造業の業況判断DIを見る。DIはゼロ以上なら景気が悪いと判断する企業よりいいと判断している企業が多いことを示す。その時点のDIだけでなく、その変化をみることがポイントだ。鉱工業生産指数は製造業の動向をつかむうえで重要な指標。物価の動向(消費者物価指数)は「景気の体温」と言われる。グラフにあるように最近の体温は低下気味だ。

従来の常識が通用しない日本経済。そんな中、ビジネスパーソンは経済動向を”受け身”でとらえるのではなく、自ら読み解くセンスを磨くことが重要になる。新たな動きは日本経済の「新常識」となるのか。これからはあなた自身の目で判断していただきたい。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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