32歳高年収女子は「恋愛偏差値」が低かった! 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<6>
「見た目が良くて、仕事もデキるからと言って、プライベートな人間関係も上手く行くとは限りません。ご自身の恋愛偏差値の低さは、そろそろ分かったでしょう。これからは、きちんと“努力”をしてください」
もう嫌だ。直人の言うことを理解しようにも、杏子の本能が拒絶をしている。そこまで自分の人間性を否定されてまで、結婚を目指す必要性なんてあるのだろうか。男に頼らずとも、自分は十分生きていけるのだ。
「杏子さん、子供じゃないんだから、拗ねるのはやめて下さい。これはカウンセリングです。結婚を諦めるのはいつでも出来ます。ひとまず、これから会う正木さんとの面談は練習だと思って、彼を楽しませるように意識してみて下さい。頭で考えて、“努力”するんです。食事会で、由香さんが男性たちを喜ばせていたのを思い出して」
男にとっては清純な、女にとっては邪悪な由香の笑顔を思い出すと、杏子の顔はさらに引きつる。「まずは、自分の偏差値の低さを自覚することも、重要なステップなんですよ。それでこそ、正しい傾向と対策が練れるでしょう。人と比べるのでなく、自分自身と戦ってください。では」。
「え……。待って……!」
直人は言うだけいって呆気なく去って行ったが、「自分自身と戦う」という言葉は、何となく腑に落ちた。確かに、結婚を諦めるのは、いつでも出来る。とりあえず今は、これからのマッチングを成功させねばならない。
お坊ちゃん医師の理想は、安めぐみ系
間もなく現れた正木は、先日、杏子からオファーを出した男だ。正木は、一見「イケメン」の部類に入る男だった。整った顔立ちには清潔感があり、質の良さそうなグレーのサマーニットを粋に着こなしている。身長は175cm弱と見た。
都内の大手病院に務める医師で、年収は1500万ほどだったか。しかし、実家は名古屋の開業医だそうで、お坊ちゃん育ちだとの情報を直人から得ていた。
「彼は正直、杏子さんとの性格の相性は悪いです。しかし、練習と思って面談に挑んでください。お坊ちゃんは、基本的に強く高飛車な女性は特に苦手です。彼の理想は、安めぐみ系の女性ですので、お手柔らかに」。直人のアドバイスを、頭の中で反芻する。
安めぐみ<<<<<<自分
こんな計算式が頭に浮かぶ。男とは、なんと馬鹿な生き物なのだろうか。理想の芸能人にしても、お嫁さん候補は、柴咲コウや沢尻エリカなんかの超絶美女ではなく、何となく一般人でも手が届くと思われがちな、少々野暮ったい女が人気なのだ。やはり理解ができない。
――まぁでも、模試だと思えばいいのよね……。杏子は、安めぐみと由香の顔を、頭の片隅で想像する。そして、彼女たちのように目を細め、目尻と眉が緩くカーブを描くのを想像しながら笑顔を作り、目を輝かせてこちらへ向かう正木を席に迎え入れた。
――次回、安めぐみを意識したマッチング・デートの結果はいかに?!
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