個人投資家は「日銀が歪めた市場」から逃げた 個人の売買代金は急減、ネット証券を直撃

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金融緩和策の一環として、日銀は2010年12月に年間1兆円のETF買い入れを開始。その後、量的・質的金融緩和の拡大に伴い、2014年11月に年間買い入れ枠を3兆円に増額した。さらに今年7月には同枠を5兆7000億円へ再増額。8月に入ると、1日当たりの買い入れ額を従来の300億円台から700億円台へと大幅に引き上げた。

日銀はTOPIXの午前終値の下落率を判断材料にして、午後にETFを買い入れるか決めているとみられる。一方、個人投資家はファンダメンタルズ(経済活動の基礎的要因)を分析し、狙っている銘柄の株価が下がりきったと判断した局面で株を買うのが一般的な投資行動だ。

「企業業績や景気の先行き不透明感から上値が限定的な中、株価が下がると日銀が買い支える。個人の買い場がなくなっている」(楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリスト)

外国人投資家も逃げ出すおそれ

ファンダメンタルズと乖離した投資行動は、これだけにとどまらない。日銀は通常のETF購入とは別に、2015年12月から「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」を対象として、年間3000億円のETF買い入れ枠を設定している。また、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資(環境や企業統治など非財務的要素に基づいて投資する手法)を本格化させる動きを進めている。

マネックス証券の福島理営業本部部長は「個人投資家はファンダメンタルズ以外の要素で動く運用に困惑している。1口座当たりの売買が小口化しており、おっかなびっくり売買しているのがうかがえる」と指摘する。

「債券市場のように、日銀の動向次第という状況になれば、弊害は大きい。外国人投資家が日本を避ける可能性も出てくる」と危惧するのは、松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストだ。市場の価格形成機能を無視した相場介入が長引けば、株式市場を衰弱死させかねない。

 

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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