核戦争開始を通告 北朝鮮の真の狙い 国際社会への挑発をエスカレートさせる理由とは

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今年1月に韓国の中央日報がスクープした金正日氏の遺訓の中で、着実に進めようとしているのがこの二つだ。3度目の核実験で核保有が進み、後は核を片手に脅迫することで米国を交渉のテーブルに着かせて核保有国として世界に認めてもらうことが北朝鮮の真意だ。

対する米国は、韓国とともに合同軍事演習を行っている。これは定期的な訓練だが、今回は米軍もステルス戦闘機F22や原子爆弾を多数搭載できるB2戦略爆撃機を投入している。これに北朝鮮は強く反発しているものの、軍事演習が終わる4月末までは、少なくとも武力衝突には発展しないだろう。「求愛を脅迫で表現する北朝鮮。遺訓に沿ったものを得るまでは現在の行動をやめないが、実際に軍事力を行使する可能性は小さい」と、韓国国防省関係者も見ている。

経済通を首相に据える

今回の北朝鮮の崖っ縁戦略には、これまでと違う点がある。対外的な強硬姿勢を示す一方で、経済成長を叫んでいる点だ。

黄海側で北朝鮮と国境を接する中国・丹東市では、「核実験直後は往来や荷物は減少したが、その後、平常に戻った」と同市の中国人貿易商は打ち明ける。また、観光客の受け入れも止まっておらず、「平壌にはわれわれ中国人だけでなく西欧人も多かった」と北京の旅行会社は言う。また、外国人にはこれまで禁止されてきた携帯電話の持ち込みと国際電話、ネット接続が3月ごろから開放されてもいる。

4月1日に開催された最高人民会議で、金第1書記は経済活動の向上に言及。03~07年に首相を務めた朴鳳珠(パクポンジュ)氏を首相に再任した。経済通で改革派として知られる朴氏の再任は、「経済活動に力を入れる」とのシグナルだろう。

朴首相は韓国や中国を訪問したことがあり、02年に実施された「経済管理改善措置」を構想した人物として知られる。公定価格と賃金の引き上げや配給制度の見直しが盛り込まれた当時としては画期的な措置だったが、成果を残せなかった。そんな朴氏を再任したことは、「金第1書記の登場で生活の向上を期待した国民が多かったが、1年経って成果が見えない。内外で軍事的緊張を高めて統制すると同時に、経済発展への希望を持たせるアメとして朴氏を再任したのではないか」との分析が多数だ。

軍事的成果と経済的成果。二兎を追うなら国際社会との対話がより必要だが、現在の北朝鮮にはそれがわかっているだろうか。

週刊東洋経済2013年4月13日号

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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