日本の不妊治療が妊娠しにくい根本的な理由

体に優しいやり方では効果を生まない

ちなみに採卵とは、女性の卵巣に針を刺し、排卵寸前の卵子を吸引する一種の手術だ。体外受精の中で、最も体への負担が大きい。体外受精では、こうして得た卵子を培養室に持って行き、精子と合わせて受精卵を作る。順調に受精卵ができ、それを子宮に戻して着床すれば、妊娠が成立する。

治療成績が低い一方で、体外受精の実施件数は世界一なのが日本だ。2位の米国も多いのだが、米国は人口が日本の約3倍もあるので、それを考えると日本の件数はちょっと異様な多さといえる。

日本人は、世界一たくさん体外受精を受けている。それなのに、採卵当たりで見ると世界一出産できていない。日本の不妊治療に足りないのは、数ではなく、その「内容」だということを、今回のレポートは明確に示した。

日本のやり方は世界の非常識

この出産率の低さは、何から来ているのだろうか?

真っ先に考えられるのは、晩婚化・晩産化の影響だ。日本産科婦人科学会が公開している統計によると、日本の体外受精は、女性が40歳以上の治療が32%と3人に1人を占めている。これはワールドレポートが伝える世界全体の割合より1割ほど多い(共に2010年のデータ)。

ただ、子どもを持とうとする年齢の上昇は、基本的には先進国ではどの国にも起きている共通の悩みだ。実は、年齢のほかにも、日本の体外受精には大きな特徴がある。それは、「自然志向」という日本人ならではの考え方だ。

日本では、「自然周期」という排卵誘発剤をできるだけ使わない方法が好まれていて、実際、国内で多く行われている。「排卵誘発剤を使うと閉経を早める」などの科学的な裏付けがない話を信じている人もいる。また、食事療法や体操など薬に頼らない健康法に強い関心を持つ人が多いのも日本の特徴で、その中には薬を有害と考える人もいる。

一見、体に優しいと思われる、この日本的なやり方が、体外受精の成功率を下げている可能性がある。

国際的な研究成果からは、排卵誘発剤の適切な使用が体外受精の出産率を上げることが、明らかになっている。つまり科学的にみると、日本で広く行われている「薬を使わない自然周期の治療」よりも、きちんと薬を使って治療をしたほうが効果は得られるということだ。これは、世界的な学術団体の合同会議でも結論が出ている事実である。

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