日本の不妊治療が妊娠しにくい根本的な理由 体に優しいやり方では効果を生まない

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薬を使わない自然周期の体外受精は出産率が低いため、英国では、国が定める不妊治療のガイドラインに「医師は、自然周期は提案してはいけない」と明記されている。これはインターネット上で公開されているため、治療を受ける人たちも簡単にアクセスして知識を得ることができる。しかし、日本ではこのような情報はなかなか得られない。

そもそも日本には、学会が作った治療法の統一ガイドラインは存在しない。その結果、日本の不妊治療は、専門施設であっても治療方針がばらばらで、妊娠率にも差があることは専門家の間でよく知られている事実だ。それゆえ患者は、どの医者が正しいことを言っているのか確信が持てず、転院を繰り返すことが多い。もしくは、それもできず、不安なまま自分に合わない治療を繰り返してしまう人もいる。

そうしているうちに、貴重な時間やおカネをムダにしてしまうのだ。

体に優しい治療では妊娠できない理由

排卵誘発剤は、卵巣の中にある卵子をたくさん育てる作用があるが、薬を使わなければ、卵巣の中ではひとつしか排卵できる卵子が育たない。そして、それが出産につながる卵子である確率は、意外に低い。

そもそも卵子というものは、排卵できるほどに成長したものでも、出産できないもののほうがずっと多いのである。採れた卵子の多くは途中で成長が止まってしまい、子宮に戻せる段階まで成長するものは一部に過ぎない。さらに、子宮に戻してちゃんと着床し、無事に成長して出産に至るものは、もっと数が少ない。

卵子1個あたりの出産できる確率は、若い人でも4分の1くらいしかない。それが、排卵誘発剤を使えば、若い人なら7〜8個、多い場合は数十個もの卵子を一度で採卵することができる。そうすれば、1回の採卵で出産可能な卵子が採れてしまう確率が高い。

実際には何個くらい卵子が採れれば良いかというと、体外受精の国際的な動向に詳しい医療法人浅田レディースクリニック理事長の浅田義正医師によると、海外では「1人の子どもが体外受精で生まれるためには、平均25.1個(38歳未満の女性に限っても6~16個)の卵子を採ることが必要」と言われているそうだ。

排卵誘発剤は、毎日自己注射が必要となり、排卵前の負担は確かに大きい。しかし、効果の低い方法で採卵を何回も繰り返すことになれば、体にも、財布にも、長期的な負担が重くのしかかってくる。

体外受精は治療費が1回につき20万円前半から80万円と高額である。日本では保険が効かないため、治療施設によって費用にはバラつきがある。国が行っている助成制度も金額が少ない。

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