瀬古チーム、“駅伝日本一"への重圧 DeNA陸上チームが発足、マラソン選手育成は後回し

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その狙いは、DeNAの企業イメージを高めるためだ。元旦の朝から5時間あまりにわたって全国のテレビを通じて生中継されるニューイヤー駅伝で優勝できれば、実況で企業名が連呼され、絶好のPR機会となる。DeNA側は、少なくとも上位に絡むレースを期待している。それができなければカネを出す意味がない。

一方、駅伝のテレビ解説でおなじみの瀬古氏だが、これまでヱスビー陸上部は駅伝とは距離を置いてきた。その背景は東洋経済オンラインが1月11日に配信した「瀬古チーム、駅伝参入は苦渋の決断か」で報じているので詳細は割愛するが、つまり、DeNAランニングクラブはチームとして新たに駅伝へ取り組むことになる。結団式での会見後、東洋経済オンラインの個別取材に応じた瀬古氏は、「駅伝に出るのは会社(DeNA)の方針」と説明した。

層の厚い陣容が必要

チームとしては経験のない駅伝。旧ヱスビー陸上部は名門として知られるが、たった3年でニューイヤー駅伝に優勝するという目標は、現時点ではかなりハードルが高い印象がある。DeNAランニングクラブには、箱根駅伝で大活躍した上野裕一郎選手や、ロンドン五輪の1万メートルで5位に食い込んだビタン・カロキ選手といったスターがいるが、駅伝はあくまでチームプレー。仮にニューイヤー駅伝で優勝しようとするならば、7区間すべてで上位争いできなければならない。層の厚い陣容が必要となるのだ。

新生・瀬古チームはそもそも9人しかいないうえ、旧ヱスビー食品陸上部のメンバーは5人。4人は新規加入で、そのうち2人は大学卒のルーキーだ。上野選手と並ぶ箱根駅伝のスーパースターで、5000メートルでロンドン五輪に出場した竹澤健介選手が、今回のタイミングでチームを離脱してしまっていることも痛い。

実力や実績のある選手をほかのチームから引き抜ければいいが、実業団陸上界では有力選手が他チームにバンバン移籍するような風土はない。それに、基盤の安定したチームから、実績がなく、まだ海のものとも山のものともつかぬDeNAに移籍するのは選手にとってリスクであり、現実的でない。ルーキーの獲得も同じだ。

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