三菱自のヒット車が不具合、復活また遠のく 久々のヒット車の電池が溶け、国内販売に痛撃

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相次いで発生した電池の不具合に共通するのは、いずれも電池の製造元がリチウムエナジージャパン(LEJ)という点だ。同社は電池大手のGSユアサの子会社で三菱商事、三菱自も出資する合弁会社である。

三菱自では、LEJが12年12月に滋賀県栗東工場で生産効率化を目的に新ラインを稼働し、それに伴って生産工程を変更したことで、何らかの不具合が発生した可能性が高いとみている。

詳細な原因については現在調査中としながらも、「1~2週間以内には判明するだろう」(中尾龍吾取締役)と短期間での原因究明が可能との見通しを示した。LEJも「現在、三菱自と共同で調査しており、早期の原因解明に努めている」と言う。

今回の事態を受け、三菱自は、東芝製の電池を使用するEVを除き、すべてのEV、PHVの生産、出荷を停止。既存のPHVユーザーには充電器やエンジンによる充電を行わないように呼びかけるなど、販売店は対応に追われている。

国内販売に痛撃

過去のリコール隠しをきっかけにブランドが毀損、国内の客離れに苦しんできた三菱自。

劣勢を挽回しようと、12年8月下旬には、タイで生産する低燃費の新小型車「ミラージュ」を国内投入したものの、鳴かず飛ばず。

「新興国のエントリーカー」として開発されたミラージュは日本の消費者には受け入れられず、発売当初、12年度内3万台と定めた販売目標に対して、13年2月までの累計販売台数は1.6万台と目標の半分程度にとどまる。

また、昨年12月には、リコールへの対応が消極的として国土交通省から厳重注意を受け、本社や開発施設への立ち入り検査も受けるなど、イメージ低下に拍車をかける事態が続いていた。

このような苦境にあって、アウトランダーPHEVは、昨年11月末の予約開始から3月末までで、受注台数が計画の2倍となる8000台と予想外の好調なスタートだった。

輸入車から乗り換える客層も目立つなど、近年の新型車の中で、三菱自は大きな手応えを感じていた。「走りの楽しさを感じるSUVながら、環境にも配慮した新しい三菱車が受け入れられた」(開発担当の岡本金典執行役員)。

12年の国内販売シェアは2.8%と最下位に沈む三菱自にとって、挽回への一筋の光となっていたアウトランダーPHEVが起こした今回の電池問題。電池はPHVの心臓部ともいえるだけに影響は深刻だ。三菱自のシェア回復への道のりはまた一段と厳しくなった。

(撮影:風間仁一郎 =週刊東洋経済2013年4月6日号

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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