なぜ国際機関の経済予測は当たらないのか ビジネスで本当に使える「経済予測力」とは

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日銀の金融政策や経済予測が非常に頼りないのも、黒田総裁自身がIMFの経済予測を信じていると公言していることからもわかります。黒田総裁は2015年10月、ペルーで開かれたG20 終了後の会見において、「メーンシナリオはIMFの見通しにあるとおりだ」と述べ、IMFの予測を金融政策の前提にしていることを明らかにしました。ですから、2015年以降、物価上昇がうまくいかない弁解として、「原油価格の下落は想定外だった」などという言葉が黒田総裁の口から出てくるのです。

私からいわせれば、日銀総裁が「原油価格の下落は想定外だった」と発言することは、「経済・市場の予測はIMF任せで、自分の頭では考えていない」と認めているようなものなのです。経済や市場のトレンドが転換したときにまったく当たらないIMFの予測によって、日本の金融政策の方向性が決められていること自体、私は日本の未来にとって非常に怖いことであると考えています。

市場予測のほうが経済予測より難しい

今のIMFを筆頭にして、国際機関の経済・市場予測は誰にでもできる保守的な代物なので、時とともに変わっていく経済・市場の動きに対応することができていません。だからこそ、世界中の企業が経営戦略を決めるうえで、または世界中の中央銀行が金融政策を吟味するうえで、国際機関の予測を重宝する必要などはまったくないというわけです。

私のこれまでの経験では、経済の予測のほうが市場の予測よりもかなり精度が高いことがわかっています。経済の大きな流れをほとんど外すことはなかったと思いますし、大きく外すという要素も市場の予測に比べれば、はるかに少ないという事実があるからです(右図参照)。 

逆の見方をすれば、市場の予測のほうが経済の予測よりはるかに難しいし、市場の予測がぴったりと当たることはまれであるといえます。しかしながら、そんな難しい市場の予測のなかでも、為替市場や原油市場のほうが株式市場よりも、トレンドの変化を前もって読むことが可能であるのです。

為替市場や原油市場というのは株式市場に比べれば、経済の大きな流れに近いところにあるので、大まかな需給のバランスをつかむのは決して困難なことではありません。世界中をざっくりと見渡してみるだけでも、供給と需要がそれぞれどのくらいあるのか、客観的に分析することができるというわけです。

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