「新幹線のお掃除」に一流が学びを求める理由 その現場力がハーバードの必修科目になった

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私はパートから正社員への試験を受けました。面接で社員になりたい動機を聞かれ、「お掃除のおばさん」として働いていることを親類に隠していた話、少しずつ仕事に誇りを持てるようになった話をして、こう締めくくりました。「私はこの会社に入るとき、プライドを捨てました。でも、この会社に入って、新しいプライドを得たんです」。役員の方たちはにっこり笑って、うなずいてくださいました。

会社を変える「現場力」

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こうした飾りは、スタッフのアイデアから生まれた(撮影:大澤 誠)

エンジェルリポートは、現場の声から生まれた取り組みです。他にも、仕事でかけられると気持ちがよくなり「ノリ」がよくなる言葉を集めた「ノリ語集」や、夏にアロハシャツや浴衣を着たり、帽子にハイビスカスの花や桜の花をつける、12月には制服の背中にサンタクロースをつけるなど、お客様に季節を感じていただくためのアイデアなど、さまざまな現場スタッフの意見を採用してきました。

一方で、ボトムアップ一辺倒だったわけではなく、鉄道にかかわる仕事の性質上、職場の規律や、オペレーションの順守については、トップダウンで厳しくマネジメントをしてきました。

『奇跡の職場~新幹線清掃チームの“働く誇り”』(あさ出版)。画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

鉄道マンとして長年働いてきた私がテッセイに入社したとき、この会社では本社主導の、現場を「管理」する体制が貫かれていました。しかしそれでは、現場のモチベーションが下がって当然です。そう感じたからこそ、本社が主導するのは人事などの制度や投資だけにとどめ、あとは現場主導でどんどんやっていく体制に切り替えさせてもらいました。

企業にとって何よりも大切なのは現場です。そして、現場とは、そこで働く人たちの集合体に他なりません。そして、現場を大切にすると言う以上、リーダーは自らその中に入って、スタッフとともに考え、実行する「全員経営」を目指すべきです。

ご紹介したものはその一例にすぎませんが、現場での地道な取り組みを、コツコツ一つひとつ積み重ねていった結果、テッセイは、日本のみならず、世界のさまざまな国からも評価をいただいているのだと思います。

矢部 輝夫 おもてなし創造カンパニー 代表

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やべ てるお / Teruo Yabe

1966年日本国有鉄道入社。鉄道整備株式会社(2012年に、株式会社JR東日本テクノハートTESSEIに社名変更)取締役経営企画部長に就任。従業員の定着率も低く、事故やクレームも多かった新幹線の清掃会社に「トータルサービス」の考えを定着させ、日本国内のみならず海外からも取材が殺到するおもてなし集団へと変革。同専務、おもてなし創造部顧問を経て退職。2015年合同会社「おもてなし創造カンパニー」を設立し代表となり、現在に至る。

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