「シェール革命」、石油メジャーはこう見る 仏トタルの探査・開発部門トップに聞く

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米国のLNG輸出量には限界、ヘンリー・ハブ価格連動は主流にならず

――シェール革命が起こっても、アジアのLNG価格は石油価格連動に変化はないのか。

当社の予測では、アジアの天然ガスの需要は2010~30年に年率4.4%増加する。同期間における世界需要の伸びの56%を占めるのがアジアだ。

現在のLNG市場は、日本を中心としたアジアの伝統的な買い手に支配されている。しかし、今後は中国とインドの需要が急激に増大し、タイやシンガポール、ベトナム、インドネシアなど新たなアジアの輸入国の台頭も見込まれる。

こうした需要増大に対応するには膨大な新規LNGプロジェクトが必要とされる。だが、プロジェクトは複雑さを増しており、投資額が高騰しているため、プロジェクトの認可が難しくなっている。

アジアにおけるガス価格は売り手と買い手、そして銀行にとって受け入れ可能でなければならない。上流からのLNGプロジェクトには、長期的な可視性を提供し、より迅速な最終投資決断を可能とする長期の契約とプロジェクトファイナンスが要求される。

天然ガス価格を参照する契約体系が生まれてはいるが、今のところは特殊な条件と制約を持つ市場にリンクした、地域的な指標として考えられる。アジア地域には独自の天然ガス指標はない。石油価格がガスのプライシングにおける必然的な指標であり、それが新規のプロジェクトに着手するために今後も必要とされるだろう。

――関西電力が米国のヘンリー・ハブ(天然ガスの指標)価格にリンクしたLNGを輸入することでBP(英国の石油メジャー)と新たに契約したほか、大手電力・ガス会社がLNGコストを減らすべく、北米産LNGの輸入を計画している。こうした動きが、現状の原油価格リンクの価格体系に影響を与えると考えられないか。

繰り返すが、アジアを中心としたLNGの需要増大に対応するには、新規のLNGプロジェクトの立ち上げが必要だ。米国からのLNGの輸出は、こうした需要の一部しか満たすことができない。

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