昼夜で色と光を変える電車内照明の凄い進化 省エネ化とともに雰囲気や居心地も一変!

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御堂筋線新車両の車内照明は、午前中が電球色・白色・昼白色、午後が昼白色・しだれ桜・ソメイヨシノ・電球色と変化し、同交通局によると「季節によって変化する時間も変わる」という。明かりに力を入れたのは「(照明を)生物に備わるリズムに合わせることで、座席の座り心地向上なども含めて快適性を高め、サービスの向上を図る」(交通局)のが狙いだ。

新車両はさらに、座席の下を照らす「足元照明」も採用。影になる部分をなくすことが安心感につながるためという。相互乗り入れする北大阪急行電鉄の車両と合わせ、この秋から御堂筋線は日本有数の「明かり」にこだわった路線になる。

LEDで「リッチな光」が可能に

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JR山手線の新型車両E235系の室内。LED照明を採用している(撮影:風間仁一郎)

鉄道の車内照明は、明治初期のオイルランプに始まり、その後白熱灯、第二次大戦後には蛍光灯と進化してきた。鉄道の車内照明としてLEDが本格的に採用されるようになったのは、1990年代半ばに白色LEDが実用化されたのちの2000年代だ。

通勤電車では2010年ごろから本格採用が始まり、同年には阪急電鉄がヘッドライト以外のすべての照明にLEDを使った車両を導入したほか、JR山手線でも試験を開始。東京メトロ銀座線も翌2011年初頭から試験が始まった。

LED照明が世間一般で急速に普及したのは、東日本大震災の影響によって節電意識が高まった2011年以降。鉄道車両への採用も広がり、東急電鉄や東京メトロなどは2013年度以降に導入した車両の車内照明をLEDとしているほか、従来車両の照明取り替えも進展。つくばエクスプレスは2015年3月末に全ての車両をLED化した。東急電鉄の「環境報告書2015」によると、LED照明の消費電力は従来の蛍光灯より40〜50%少なく、寿命も蛍光灯が約1万時間のところ4万時間まで延びるという。

そして、省エネ化の推進によるLED照明の普及と同時に増えてきたのが照明に凝った車両だ。LED照明は従来の照明機器に比べて自由度が高く、今年の春に登場した西武鉄道の観光電車「52席の至福」をデザインした建築家の隈研吾氏は「LEDという武器ができて、小さな寸法の中でリッチな光を作ることができるようになった」と語る。

最近は「座れる列車」の運行や空気清浄機の搭載、座席の幅拡大など、通勤電車も機能面だけでなく居心地の良さを重視する傾向が出てきている。大量の乗客をさばく必要性から車内の構造はどうしても画一化しがちな通勤電車だが、省エネ化と同時に雰囲気や居心地も一変させることのできる「明かり」の進化は今後も続きそうだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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