フジは、なぜ「ネット炎上」の標的になるのか 「韓流ゴリ押し」はあり得ないのだが…

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このような見解を拙著『フジテレビはなぜ凋落したのか』に書いたところ、アマゾンのレビューには最低評価の星1つがいくつも並び、筆者はネットで「嘘つき」呼ばわりされ、顔写真付きでバッシングされることになった。経済原理による放送の判断という言い分は、ネット世論には受け入れられない。

確証バイアス(結論ありきで自分に都合がいい情報ばかり集める傾向)によって、ネットの住民の主観的現実は歪められたままで放置され、それを訂正したり、批判したりするコメントはまったくといっていいほど現れてこない。

それはそうだろう。反論したところで筆者が経験したように、罵詈雑言を浴びせられるだけならば、距離を置いて関与しない方が賢い。つぶされるのを覚悟でわざわざネット上で反論する奇特な人はいない。

その結果、ネットで生まれた「フジテレビ陰謀論」は、ネット上で拡散、増殖され、いつのまにか主流派の見方になってしまった。それに対抗する意見は、「沈黙の螺旋」によって委縮してしまったからだ。

いまやフジテレビの「韓流ゴリ押し」は周知の事実として知れ渡るようになった。一部のメディアがもはや論争の余地がない事実として、フジテレビを「ディスる」際に繰り返し取り上げるようになったこともある。

このように、「集団極化」により既成事実化したネット世論は、バーチャル世界だけでなくリアル世界にも、しみ込んでいく。最近、教鞭をとる大学で感じるのは、学生の言葉の端々に「反日」であるフジテレビへの嫌悪感がにじみ出るようになったことだ。ちなみに、15年に週刊文春がメルマガ会員を対象に実施したアンケートによると、「嫌いなテレビ局」ランキングでフジテレビは断トツの1位である。

蛇足になるが、このようなネットの構造を考慮すると、今後、憲法改正の議論が展開された際に“ネトウヨ”が改正に賛同するならば、護憲派の世論はあっという間につぶされるであろう。背筋が寒くなる。

背景にある日韓関係の変化とマスコミ不信

さて、フジテレビに対するデモが発生した理由は、日本と韓国の関係の変化も視野に入れて考察するべきである。

そもそも韓流タレントやコンテンツが世界で注目されるようになった始まりは、1990年代後半にさかのぼる。韓国は97年のアジア通貨危機で株価が暴落し多くの企業が倒産したのを受け、IT産業や文化事業の振興により経済の立て直しを図ることにしたが、人口は日本の3分の1で、国内市場が小さかった。そこで、海外需要を取り込むためにコンテンツ産業の持続的成長を目指す「クールコリア」政策が実施されたのだ。

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