バンダイナムコを引っ張る「キャラ物」の迫力 「アイドルマスター」には1200万人が釘付け

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こうした事業形態が形作られたのは2005年の統合時だ。「アミューズメント施設とゼロから自社開発するゲームに強いナムコ」と「おもちゃとキャラを活用したゲーム開発に強いバンダイ」という事業の被りが少ない2社が手を組むことでシナジー効果を発揮するのが狙いだった。

しかし、思惑とは裏腹に統合後しばらくは決して順風満帆だったわけではない。むしろ、2010年までは業績不振に陥っていた。誤算となったのは、両社が所有していたゲーム事業だ。「ゼロから作り上げるナムコとスピーディーに作り上げるバンダイのいいとこ取りを狙ったが、逆に現場が混乱してしまった」とバンナム幹部は当時を振り返る。

「ガンダム」などの大型IPもスマホゲーム化©創通・サンライズ

さらに、当時はまだ事業ごとに縦割りで開発する風土が強く、IPを最大限活用する柔軟性が失われていた。その結果、2007年3月期に465億円だった営業利益は右肩下がり。2010年3月期には19億円にまで減少した。

苦境を受けて2010年に「リスタートプラン」という再建計画を発表。さらに、縦割りだった組織にも横串を刺した。IP価値の最大化を前提に状況に合わせて適切な形態で提供できる体制を目指し、事業ユニットや取締役体制を変更したのだ。そこから、徐々に業績は復調していった。

スマホへの展開で成長が加速

さらに、スマホの普及によって、新たなコンテンツの出口が生まれたことも追い風になった。「ワンピース」「ドラゴンボール」「ガンダム」などの大型IPを矢継ぎ早にスマホゲーム化。この際、自社開発にこだわらず外部企業と共同開発したことが素早い製品投入に繋がった。

スマホ展開によって大きな成長を遂げたIPもある。「アイドルマスター」はアイドル育成ゲームとして2005年からアーケードゲームや据え置きゲーム機を軸に展開しており、コアなファンがついていることで定評があるゲームだった。それをスマホゲームに展開したのが、2015年9月に配信した「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」。これが3カ月で1000万以上のダウンロードを記録。今年6月末時点でダウンロード数は1200万に達し、今も同社の好業績を牽引している。

今後の課題は海外だ。事業建て直しに注力していたため、これまで海外展開には十分手をつけられなかった。そのため、前期における海外売り上げ比率は22パーセントに留まった。日本が誇るコンテンツを世界に売り込んでいけるか、バンナムの手腕が試されている。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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