ドル円は再び「1ドル120円」へ向かうのか 「ジャクソンホール」は相場の転換点に?
FRBも金利水準を、「平時のあり得べきレベルに戻す」という大仕事が待っている。ただ、そのために対抗馬のトランプ氏を利することになっては、元も子もない。米国トップエスタブリッシュメントからすれば、トランプ氏を大統領職に就かせるということは、何があっても避けなければならない。よって、大統領選だけを考えれば、FRBが採れる政策というのは、選挙までは現状維持、選挙後おそらく12月から利上げを再開、という路線が見えてくる。
ただ、ここに来て大統領選挙を待たずに、利上げに踏み込むべきとの発言がFRB幹部から出てくる背景として、まず第一にトランプ氏が自らの発言で自滅し、支持率を落としつつあるということが大きいだろう。
第二に、新興国等世界経済の安定がある。今年2月の上海G20では、新興国経済の混乱が問題となり、秘密裏のドル安合意があったのではないかなどと囁かれた。また、6月には英国EU離脱という衝撃が走った。BREXITの負の影響がどの程度世界経済を揺るがすのか、当局者はそれを見定めなければならなかったが、どうやら今のところ、心配したほどの悪影響は出ていない。こうして見ると、これまで米利上げを遅らせていた世界経済の懸念は、ある程度の落ち着きを見せている。
ドルはFOMCに向けて一段の高値を試す
もちろん、インフレ期待が依然として低いことや、労働生産性の伸びが低いといった問題は残ってはいる。しかし、現状の極めて低い政策金利を0.25%程度上げることは、ほとんど問題ないだろう。「どうせFRBは金利を上げられないだろう」という市場の観測や、日欧の積極的金融緩和によって長期金利が極端に低い状況が続いているが、やはり、これはある程度修正(健全化)されなければならないのではないだろうか。
次の注目はフィッシャー副議長も言及したように、9月2日の米雇用統計となる。5月にイエレン議長が「今後数カ月以内に」と利上げに言及した直後、6月3日の米雇用統計でNFPわずか3万8000人という数字に「口をあんぐり」したのも記憶に新しい。
6月同様の数字が発表された場合、さすがに9月利上げという線はなくなるだろう。そして、数字をもう一度検証していくことになる。仮に、市場予想通り18万人、もしくはそれ以上の数字が出た場合、9月利上げの可能性が高まったとして、9月21日のFOMC(米公開市場委員会)に向けて、ドルは高値を試すことになりそうだ。
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