任天堂が決断した「過去のしがらみ」との断絶

ソフト流通の大改革は実を結ぶか

卸売り業者のみならず、サードパーティと呼ばれる外部のゲーム開発会社にも初心会は影響力を持った。「任天堂タイトルの発売時期が優先されるので、自社タイトルの発売日をコントロールできなかった」(ゲーム会社幹部)。売れそうなソフトならば担いでくれる場合もあるが、すべては任天堂のさじ加減。ソフトの委託製造から販売まですべてを牛耳ることで、任天堂は娯楽の王国の頂点に君臨してきた。

しかし初心会は1997年に解散している。当時、任天堂は複雑な構造のロムカセットを採用しており、追加生産に2カ月程度かかっていた。人気タイトルが品切れすると、追加生産を待たずに中古ソフトとして取引されるようになる。初心会の枠外で流通が広がったことは、流通にもサードパーティにとっても不満のタネだった。こうして任天堂の求心力は弱まっていく。

ここにダメ押ししたのが、1994年に発売されたソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)の「プレイステーション」だった。音楽で使われていたCDを採用し、ソニーミュージックの工場と倉庫を活用した。ソニーは自社で卸売り機能を持ち、小売りと直接取引を行うことで、店頭でソフトが品切れしても3日で生産・流通できる体制を敷いたのだ。当時スクウェア(現スクウェア・エニックス)が有力ソフトを任天堂からソニーへ切り替えるなど、業界では異変が起こり始めていた。やがて大手ソフトメーカーは自社生産・流通へと乗り出すことになる。

最近まで「初心会」の機能は残っていた

紆余曲折を経て20年前に解散した初心会だが、実は最近までその機能は残り続けていたとされる。表立って活動しなくなっただけで、「ゲーム業界のフリーメイソン(秘密結社)」にたとえる人もいたほどだ。しかしこの間、ゲーム業界全体ではソフトのダウンロード販売が右肩上がりで伸びていった。

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ソニーや米マイクロソフトはネットワークサービスを積極的に展開する中、明らかに任天堂の取り組みが遅いのは「初心会に配慮してパッケージ流通を守ろうとしているのでは」(サードパーティ)とささやかれた。13年に任天堂は大幅な組織再編を行い、山内時代の古番頭が複数辞めている。「この数年前に初心会を完全に終わらせていた」(元幹部)。

時代とともに、初心会に所属する卸売り業者も1ケタ台まで減っていった。バンダイ系の玩具卸大手ハピネットは06年にモリガングを買収し、13年に子会社化したトイズユニオンに吸収させることで任天堂向けシェア25%を握る。任天堂によるジェスネットとアジオカの買収については、「独占禁止法の問題があるので、いきなり取引量を減らされるなどの大きな影響はないだろう」(ハピネット)。

ただ、長期的に見るとわからない。任天堂みずからが流通網の過半を抑えたことで、次世代ゲーム機のNXではソフト流通が大きく変わる可能性もありそうだ。

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