旅行サイト「手数料1割」に抵抗するホテル勢 じゃらんや外資の攻勢にリアルが目覚めた

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調査会社フォーカスライト日本法人の牛場春夫代表によれば、市場規模は世界で20兆円弱。「オンライン旅行会社経由の予約比率は、日本では約7割、米国でも5割になっている」という。

現在でもオンライン旅行会社は、ホテル側にとって、ネット経由で送客してくれる、ビジネス上のパートナー。だがその存在は、今や大きくなりすぎた。ホテル業界から聞こえるのは、「手数料が高すぎる」(中堅ホテル運営会社トップ)という反発。各サイトの手数料率は非開示ながら、海外で15~20%、国内大手では8~10%とされる。

売上高が数兆円クラスの外資系ホテル運営会社にとって、自腹で負担しなければならない手数料は看過できないコストだ。対抗策としてホテル側は、自社の公式サイトで「最安値保証」と称して、オンライン旅行会社と変わらない価格をアピールし始めた。要は“中抜き”=直接予約による手数料の圧縮である。

ホテルや旅館は「直接予約」をアピール

M&Aによる会員の囲い込みも続く。国内勢で目立つのがホテルオークラだ。2010年に経営破綻した日本航空から、旧JALホテルズ(現オークラ ニッコー ホテルマネジメント)を買収。翌年2月には互いの会員プログラムを統合した。2011年で両社合わせて35万人だった会員は、今年100万人を突破している。

昔ながらの旅館の巻き返しも見逃せない。2011年、じゃらんが新ポイント制度採用に伴い、8%から10%への手数料値上げを図ったところ、のめない箱根温泉旅館ホテル協同組合と衝突する事態が起きた。最終的には個々の旅館が値上げを受け入れて決着。目下、組合は公式サイト「箱ぴた」を通じた、直接予約の確保に躍起になっている。

ホテルの場合、横比較ができるオンライン旅行サイトに劣っていた口コミでも、新たなサービスを導入。ネット上の口コミを収集し分析・提供する独トラストユーの手を借りた。ホテルは集まった口コミを自社サイトに取り入れることで、「直接予約に欠かせない第三者の評価も得られる」と、同社日本法人の下嶋一義社長は息巻く。

ただし、顧客の囲い込みを進めるホテルにとって悩ましいのは、オンライン旅行会社が高い手数料に見合うだけの強力な集客力を持つことだ。直接予約と、オンライン旅行会社経由予約の比率をどう保つか、各社の解も一様でない。「直接予約を強化したい思いを尊重してくれるパートナーと仕事をする」(ヒルトンのシルコック副社長)。

高級ホテルほどでない中規模ホテルは「自社サイト、オンライン旅行会社、伝統的な旅行会社と、チャネルの多様化が重要」とフォーカスライトの牛場氏は説く。オンライン旅行業界とホテル業界の攻防は熾烈さを増すばかりだ。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と2人の娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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