アベノミクスの行方を占う3つのポイント 「期待」「賃金」「金利」に注目せよ
3月中旬には黒田東彦・新総裁の率いる日銀の新体制が発足する。黒田氏は「大胆な金融緩和を」と意気込んでいるが、日銀に国債を引き受けさせる「財政ファイナンス」や外債を買って円安に誘導する政策は諸外国からの「為替操作」批判などもあって封印し、現実に黒田日銀が取ることのできる手段は限られているのが実情だ。
二つ目のポイントは賃金だ。物価が上がっても、賃金が上がらなければ、人々の生活水準は高まらない。それゆえ、安倍政権は、物価と並んで賃金の動向に注目している。過去の統計を見ると、企業の利益と賞与、輸出と所定外給与、消費者物価とパートの時給は、それぞれ強く連動して動く傾向が観察される。
特に、パートの時給上昇は重要になる。消費者物価指数を構成する588品目のうち、テレビやデジタルカメラなど、価格下落の激しい耐久消費財の占める割合は6%にすぎない。消費者物価の趨勢を決めるのは、品目の半分を占めるサービスの価格動向だ。サービスのコストで大きいのは人件費であり、パートの時給上昇はサービス価格の上昇を通じてデフレ脱却にもつながりうる。
長引く日本のデフレの原因について、東京大学の吉川洋教授は「日本だけデフレが続いているのは、名目賃金が下がり続けたため」と指摘している。仮に、賃金が上がり始めれば、物価も上昇し、人々の所得の増加を通じた、経済の活性化が期待できる。
最後のポイントは金利の動向だ。日本経済が抱える最大の難題は、国内総生産(GDP)比で200%超、金額にして1000兆円近くに膨れ上がった巨額の国債残高を、どのようにして安定的に減らしていくかにある。
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