僕に残るNHK的な遺伝子
いろんな意味で選択肢が増えた。NHKにいるときは「NHKのドラマはジャーナリズムであるべき」というベースや、ある意味で自己規制があったと思う。辞めたあとに、最初に監督を務めた作品が、アクションエンターテインメントの『るろうに剣心』。このネタは、NHKにいては発想できないネタ。だって、社会派監督という僕の世間的評価とは、まったくベクトルが違いますから。『プラチナデータ』もそうかもしれない。もちろんNHK的な遺伝子は僕の中にまだ残っていて。社会的なネタにストイックにアプローチしたいという気持ちは強く残っている。それは、どこかでまたやれればいい。いずれにせよ、芸域というか、扱えるネタが今すごく広がっています。
――いろんなことがしたいというのが独立の大きな理由ですか?
そう。いろんな人に会えるし、CMやPVなど新しいジャンルの仕事もきて、一つひとつの日常に鮮度がある。NHK在籍時は、あと5年か10年かわからないけど、「大河をあと2、3回やって……」といった歩留まりというか。今後の仕事の在り方がだいたい見えてしまっていたので。
――一方で、「あと20年で66歳、それまでに作れる映画は10本ぐらいしかない」というお話をされていました。
監督業は、やっぱり大変な仕事ですから。アーティストである一方で、1本の映画で数億のおカネを預かるビジネスマンでなければならない。2年に1本と考えたときに、10本になる。でも僕はその数をどう増やすかを考えている。2年に1本ではなくて、1年に3本撮りたいと思って仕事をしている。できる限り多くのネタと、多くのアウトプットをしていきたい。一方で、隅から隅まで自分がやりたいという、本当に自分だけの作家性にこだわった映画作品を、生きている間に1本作りたいと思っている。
今は、フリーになったばかりで需要がある。プロデューサーから「こういうネタを大友でやりたい」と言ってきてくれる。僕という個性の監督に、何を撮らせたいと思っているのか、自分自身楽しみにしているところがある。とんでもないものがいっぱいきます。『るろうに剣心』も『龍馬伝』と明治でつながっているかもしれないが、あの漫画のタッチを見たら、普通は僕に話を持ってこないと思う。でも、それが面白い。この漫画を大友が手掛けたら見たこともないものになるかもしれない、そうした向こう側の発想も少しわかる。「大友の演出」を、商売としてどう考えてくださるのか、その視点が、今、新鮮で刺激的で楽しいですね。
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