次の東京は「五輪後の不況」を避けられるのか 五輪が持続的な成長をもたらすとは限らない

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オリンピックは、スポーツの祭典としてだけでなく、開催国の経済を活性化するイベントとしても注目されるが、過去の大会で開催国の経済はどうなったかをみてみよう。経済構造や統計の取り方によって差異が生じてはいけないので、以下では、OECD(経済協力開発機構)が統一的に公表しているGDP統計に基づいて比較可能で、石油ショック(あるいはスミソニアン体制崩壊後の変動相場制移行)以降に開催されたオリンピック夏季大会(1980年モスクワ大会のソ連を除く)9回について、開催国の実質経済成長率が大会開催前後でどう変化したかを明らかにする。

実質経済成長率の高低を比較するにしても、高成長期にある国と安定成長期にある国とでは単純には比較できない。そこで、オリンピック開催年の実質経済成長率を100として比較する。ちなみに、1980年前後のソ連のデータはとることができない。

アトランタを除き軒並み成長率が鈍化

1976年のモントリオール大会以降、開催国の実質経済成長率を、オリンピック開催年を100とした翌年の成長率の大きさで指数化した(日本のみ、旧基準の内閣府「国民経済計算年報」に基づく値)。この値が100を超えていると、開催翌年の成長率は開催年よりも高くなったこと意味する。100を割っていると、開催翌年の成長率は低下したことを意味する。マイナスの値は、開催翌年の成長率はマイナスとなったことを意味する。

1996年のアトランタ大会後のアメリカ以外はすべて、開催翌年の実質経済成長率は、開催年の成長率よりも鈍化していたことがわかる。1992年のバルセロナ大会後のスペイン経済では、開催翌年はマイナス成長だった。分析対象とした9大会中8大会は、オリンピック開催翌年には成長率が鈍化していた。さらにいえば、オリンピック開催年と開催前年の2年間と、開催翌年と開催翌々年の2年間の実質経済成長率を比較した指数も、9大会中6大会は成長率が鈍化していることがわかる。

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