ISを倒しても中東に平和が訪れる日は遠い どこまでも複雑なシリア情勢にプーチンの影

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米国の軍事力と外交の力点を中東以外にも広げることは、つまるところオバマの初期の野望の1つだった。米国は中東のエネルギー資源にかつてほど依存しておらず、その他の地域で責任と心配事を増やしている。力をつけてきた中国や、復権したロシアとの対立をめぐっては、特にそうだ。

明確なのは、米国もロシアも、かつてイラクやアフガニスタンで試みたように、多くの軍事力をつぎ込む意思はないということだ。現在の戦いの主体は、国外から支援と助言を受けた現地勢力だ。

米国は、アサド政権を意図的に弱体化させるため攻撃を拡大したいとは、あまり望んではいない。そうした行動はシリアの悪夢を単に長引かせる可能性があるからだ。核兵器保有国であるロシアに所属するものを攻撃するなどということはもちろん、話題に上ってすら来ない。それはリスクが大きすぎるのだ。

米国の新大統領の選択はシリア情勢次第

限りなく残虐なプーチンやアサドと、ある程度節度のある米国との間にはモラル面で明らかに大きな隔たりがある。それでも西側のモラルは、そうであると信じたいほど高いものとはほど遠い。米国は同盟国に対し、いまだに目をつむっているようである。たとえば、サウジがイエメンで行っている血なまぐさい軍事介入などだ。

11月の米大統領選に誰が勝利したとしても、中東における米国の役割において、自らの軌跡を残したいと思うだろう。だが、オフィスを引き継ぐ時点でシリア情勢がどうなっているかが、新大統領のその後の選択を大きく左右するだろう。

つまり、今後数週間や数カ月で、数多くの論点が出てくるということだ。この問題が近い将来、現在よりも単純になるとは期待しないことだ。

(文中敬称略)

著者のピーター・アップス氏はロイターのグローバル問題のコラムニスト。シンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」の創設者でもある。このコラムは同氏個人の見解に基づいている。

 

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