ギュレン師は事件への関与をいっさい否定したが、多くの専門家はギュレン派に同調する部隊が仕掛けたと考えている。仮にクーデターが成功していたら、トルコは出口の見えない内戦へと突き進み、民主主義の希望は消え去っていただろう。
事件をめぐる希望の1つは、何年も対立していたトルコの民主的な政党が、民主主義を守るとの共通目標で団結した点だ。トルコがこうした衝撃的な状況にあったのに西側諸国が共感を示さなかったのは、驚くべきことだ。事件後にエルドアン大統領と最初に会談した首脳がロシアのプーチン大統領だったことは、西側には何の利益にもならない。
トルコが今、ギュレン派を権力の座から追放しようとしていることは、全く驚くべきことではない。政権内部による反乱に直面した国なら、同じことをするだろう。
もちろん、反乱直後の取り締まりにおける権力乱用は見逃すべきではない。しかしわれわれは、当局の立場に立って考えるべきだ。政府が取り締まり対象を広げ過ぎているのか、それともまだ不十分なのかは、現段階では不明ではあるが。
参考までに述べると、トルコ政府高官は欧州評議会のヤクラント事務総長との会談の中で、欧州評議会加盟国としての立場に基づき、法の支配を守ると約束した。いずれにせよ、事件直後の騒動が収まれば、評議会が権力乱用問題に対処する機会はあるだろう。
欧米にとってひとごとではない
トルコは歴史の十字路に立っている。しかし、この国がどの方向に進むのか見極めるには時期尚早だ。対立と強権主義が今後も続くなら、この国はついに限界に達するかもしれない。
しかし、民主主義実現という共通目標に基づいた団結が最終的に勝るならば、クルド人との和平プロセス再開や政治改革の進展が可能となり、EU加盟の希望も見えてこよう。
西側の外交官は、民主的価値を反映した、西洋とトルコの双方を利する結果を得るべく、トルコとの結びつきを強化すべきだ。
同国は西洋的近代化をイスラム世界にもたらす架け橋となるかもしれないが、仲間外れにされて強権的になれば、東欧との国境地域に衝突と紛争を再びもたらすかもしれない。ボスポラス海峡で起きていることは、欧米諸国にとってひとごとではないのだ。
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