ラオックス、「平均客単価4割減」の巨大衝撃 「爆買い」失速だけじゃない、赤字転落の理由

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時計を例に取ると、従来は飛ぶように売れていた50万〜100万円の商品の動きが鈍く、現在の売れ筋価格帯は30万円前後になっている。全商品を含む平均客単価も、今年6月は2万1404円と、ピークの2015年4月から4割以上下落した。

強みとしていた独自のビジネスモデルも崩れ始めている。ラオックスは旅行会社に手数料を払い、団体の誘客を図っているが、中国人客は個人旅行へとシフト。ラオックスが今中間期に旅行会社に払った手数料は48億円と前年同期から13億円減少した。

地方に出店エリアを広げる積極策も裏目に出た。2015年3月には当時の総資産の倍以上にもなる約400億円の増資を実行。それを原資に、店舗数を41店(2016年6月末時点)へと倍増させたが、北海道と鹿児島県の2店は、今年7月には出店から半年ほどで閉店に追い込まれた。

売り上げが落ちる一方、コストが膨らむ

大量出店により人件費や地代家賃は膨張。一方で売り上げが落ち込んでいるため、かつての赤字常態化へ逆戻りする懸念すらある。

それでも、ラオックスの羅怡文(らいぶん)社長は、「日本のインバウンド市場の拡大は初期段階で、30年に向けて飛躍的に成長する」と、強気の姿勢を崩さない。今後は個人客の取り込みに向けて品揃えを拡充させるなど、従来とは違う店作りを積極的に進めていく。

中期経営計画では2017年度までに営業利益120億円の目標を掲げ、400億円増資の際には発行価格2690円(今年6月の株式併合を遡及)で資金を集めた。今年度の営業利益予想は12.5億円、足元の株価も700円台で低迷する中、中計を信じた投資家に報いることができるか、正念場を迎えている。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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