シャープ、生き残りへの"賭け" 鴻海を捨てる覚悟でサムスンへ
アイフォーン向けが停止
スマホやタブレット端末でサムスンと激しく競うアップルが、たった3%とはいえサムスンの資本が入ることにいい顔をするはずはない。しかしアップル向けビジネスは一部の業界関係者が「救いようがない」と評するほど、急悪化している。
2月末、亀山第1工場で、アイフォーン用パネルの原材料投入が止まった。遠くない時期にパネル生産はいったん停止する。亀山第1は、アップルが約1000億円を負担して生産設備を入れた「アップル専用工場」。生産品目は、昨年9月に発売となったアイフォーン用パネルのみである。
2012年10~12月期、シャープは5四半期ぶりの営業黒字に沸いたばかり。アイフォーン5向けに10、11月と亀山第1がフル稼働し、液晶事業の赤字幅が縮小したことが原動力となった。それだけに亀山第1の生産停止は「かなりの痛手」(シャープ関係者)である。
「(アイフォーン5の)次のモデルまで、アップルからの大型注文はないだろう。次のアイフォーンがヒットするのか、パネルの注文がシャープに来るのかもわからない」とシャープ関係者は頭を抱える。
隣接する亀山第2工場のアイパッド用パネルの生産は昨年12月に止まったまま。サムスンに加え、台湾勢なども勢いを増すタブレット端末市場で、アイパッドの存在感は急激に低下している。
アイパッドの穴を埋めるべく、亀山第2で受注したのが、サムスン向けのテレビ用パネルである。「価格は足元を見られる。それでもサムスンは『買う』と言った量はきっちり買ってくれる」(シャープ関係者)。
大型パネルの堺工場も、今やサムスン頼みだ。昨夏、堺工場の運営会社を鴻海グループとの合弁に切り替え、引き取り責任を分担している。シャープが引き取るパネルの大半は、サムスンの40型と60型のテレビ向けに出荷されている。
償却負担が重い巨大液晶パネル工場にとって、稼働率の安定は最大の課題である。昨秋ごろから、シャープとサムスンは、テレビ用パネルを中心とする長期供給契約の締結を模索していた。並行して出資要請を進めてきたとみられる。
サムスンは今年、全世界で約3億台のスマホの販売を計画している。「ギャラクシーS」シリーズなど旗艦モデルには輝度の高い自社製の有機ELパネルを採用するが、液晶パネルを使用する機種も4割程度見込んでいる。「好調なギャラクシー向けに納入できるかどうかが、液晶パネルメーカーの経営に大きな影響を与える」とテクノ・システム・リサーチの林秀介氏は指摘する。
「資本を入れるのであれば、パネルを安定供給してほしい」。サムスン幹部は出資を決断するに当たり、シャープにこう念を押したという。
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