このような悠長な時代は昨年、とうとう終わりを迎えることになる。国の財布が思いのほか小さくなってきたからだ。2012年の税収は前年比12.1%増と3年ぶりの低水準になった。
2010年から2011年にかけての税収は20%以上の伸びになったが、相対的な低成長時代を迎えたことで企業活動が低迷、税収に影響を与え始めた。2013年のGDP成長目標も、前年と同じ7.5%で、かつ減税に重きを置いた経済政策をとるとみられる。そのため、国家財政は以前のように単純な大盤振る舞いができるような状況ではなくなってきたわけだ。
レーダー照射は予算獲得へのアピールだった?
中国に限らず、官僚の行動原理は予算獲得にある、と言っても過言ではない。国家財政の異変のにおいをかぎつけ、中国では昨年から官僚たちの熾烈な予算獲得競争が始まった。人民解放軍もその例外ではない。昨年秋口から始まった尖閣諸島をめぐる日中両国の摩擦から始まって、今年に入ってからの中国海軍による自衛艦に対するレーダー照射などは、いずれも人民解放軍の予算獲得に向けた北京中央政府に対するアピールと見ることもできる。
過去の事例を振り返ってみると、1996年の台湾海峡危機から、1999年の李登輝総統の「両国論」発表、2001年の海南島沖の米中空軍機の空中衝突事故などが起きるたびに、中国の軍事予算の対GDP比率はしだいに引き上げられてきた。昨年秋からの尖閣問題や、フィリピンとの摩擦はまさしく、軍事予算獲得に利用され、結果的に解放軍の思惑どおりに進んだと見てよい。
2012年の秋口は、共産党大会を控える重要なタイミングであった。習近平総書記(次期国家主席)の新体制を固める前に、日本に対して弱気姿勢を取る選択肢は北京には全くなかったといってもよい。人民解放軍や海上保安庁に当たる海監にとって、存在感と重要性をアピールする好機が到来したわけだ。
そうしたなか、中国は旧ソ連空母「ワリャーグ」を改造した「遼寧」を昨年9月に就航させ、艦載機の発着に成功。国民の喝采を浴びた。それだけでは飽き足らず、中国は近い将来、原子力空母の建設を計画しており、それはほぼ既定の路線となりつつある。
原子力空母などの開発・建設費用は今回2013年の軍事予算にまだ含まれていないはずだから、将来的な軍事費の上振れ余地は相当大きいことになる。海上兵力だけではなく、老朽化した航空機や戦車の空軍、陸軍の大規模な更新に加えて、有人宇宙船と宇宙ステーション建設、国産GPSシステム(北斗)の運営など、装備充実や関連する技術開発の計画は枚挙にいとまがない。
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