三ヶ日vs蒲郡、新幹線沿いの「みかんPR合戦」 昔は柿バトルも!三河の車窓は果物の激戦場

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さて、蒲郡を抜けると、列車は2198mの坂野坂トンネルを通過し、右にカーブしながら東海道本線をまたぐ。E席側に見える駅は幸田(こうだ)駅だ。

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幸田駅をまたいですぐ現れるJAあいち三河の建物。いちごと筆柿のオブジェは最近塗り替えられた

その先に、またフルーツが大きく描かれた倉庫が見えてくる。JAあいち三河の幸田営農センターだ。壁面に描かれているのはいちごと柿。よく見れば、単に壁に描かれているのではなく、立体的なオブジェを壁に貼り付けている。

細長い柿は、額田郡名産の筆柿だ。通常の柿よりも細長く、筆のように見えることからこの名前がついた。かつては“珍しい宝の柿”を意味する名前で呼ばれていたが、全国出荷するにあたって、諸般の事情により今の名前になったようだ。

江戸時代から農家の庭先などで作られていたが、全国に出荷されるようになったのは昭和40年代になってから。甘柿の中に1割程度渋柿が混ざる「不完全甘柿」で、当初は人間の「勘」で、現在は特殊な機械を使って選別している。

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2010年まで坂野坂トンネルを出たところにあった、柿の看板。愛知県内は野立て看板が多い

ところで、以前は、このすぐ手前に、全国2位の出荷量を誇る関西地方の柿をアピールする看板があった。列車がまさに筆柿の里に入ろうとする時に、まるで先制パンチを浴びせるような看板。

「みかん戦争」と並ぶ「柿戦争」として、ごく一部で話題になっていたが、2010年頃に撤去されてしまった。当時看板を出していた農業団体によれば、広告代理店の勧めで場所を選んだところ、たまたま筆柿の産地になってしまったそうである。

車窓から見える看板ひとつとっても、調べてみると何かしら興味深いものだ。

東海道新幹線最長の直線はここだ

さて、列車は幸田駅を跨いだ地点から三河安城駅付近まで、東海道新幹線で最長となる16kmの直線区間に入る。豊橋手前の新所原から蒲郡付近までと、名古屋手前の大高駅付近にそれぞれ「弾丸列車計画」時代に買収した土地があり、この2つをどう結ぶかがポイントだった。

当初の計画では、幸田駅を跨いだところからもう少し南側を通り、刈谷駅付近を通ってまっすぐ大高につなぐはずだった。しかし、刈谷駅西側にできた跨線橋にぶつかってしまうことや、刈谷駅周辺に工場がたくさんできていたことからこのルートを断念。代替案の中から、地盤の問題が少なかった現在のルートが採用された。

もし、当初の計画通り刈谷経由のルートだったら三河安城駅は存在しておらず、下り「のぞみ」の「列車はただ今定刻に三河安城駅を通過いたしました」というお馴染みの車内放送もなかったわけだ。代わりに、刈谷駅に新幹線の駅が設置されていたかもしれない。

そして、最長直線区間も、より長い20km程度になっていたはずである。

「のぞみ」は最長直線区間を約4分で通過。一方、「こだま」は三河安城駅に停車する。

(写真はすべて筆者撮影)

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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