IT革命で潤うのは「トップ1%」だけ 『機械との競争』著者のアンドリュー・マカフィー氏に聞く

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――労働者が、機械との競争に勝つにはどうすればいいでしょうか。

短期的対策と長期的対策に分けて考えるべきだ。テクノロジーの進歩がいくら速いとはいえ、明日にあらゆる仕事がなくなるわけではない。短期的には、インフラや教育に投資し、経済成長を加速させ、雇用を増やすのが賢明だ。雇用創出の源と言われる起業を促進させるのもいい。

教育について言えば、基本原則は、コンピュータが苦手なことを勉強し、うまくできるようになることだ。コンピュータは日進月歩とはいえ、創造性やイノベーションに長けてはいない。人々のやる気を高め、指導する能力を持ったコンピュータにもお目にかかったことがない。今すぐ、こうした点を米国の教育システムに反映させるべきだ。コンピュータと真っ向から戦うのではなく、共生する術をいかに学ぶかも重要である。

1~2世代後、サイエンスフィクションが現実に

長期的には、少ない人手で済む非常に生産的な経済の到来に備え、社会や政府が、新たな教育や政策を検討し始めることが必要だ。いったいどのような経済になるのか、どのような対策がふさわしいのか、まだよく分からないが、今すぐ始めるべきだ。もちろん、ロボットが人間の仕事を根こそぎ奪うなど、完全なオートメーション化経済が5年や10年で訪れるわけではないが、未来は刻々と近づいている。しかも、非常に速いペースで。

40年後、われわれはまだ車を運転しているか。まだ飛行機で空を飛んでいるか。答えはノーだ。では、工場や倉庫で、ほとんどの仕事をロボットが肩代わりするようになっているか。コンピュータが人間の言うことを理解し、質問に答えるのが朝飯前の時代になっているか。答えは、いずれもイエスだ。あと1~2世代後になれば、サイエンスフィクションさながらの経済が到来するのは間違いない。

肥田 美佐子 ニューヨーク在住ジャーナリスト

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ひだ みさこ / Misako Hida

東京都出身。『ニューズウィーク日本版』編集などを経て、単身ニューヨークに移住。アメリカのメディア系企業などに勤務後、独立。アメリカの経済問題や大統領選を取材。ジョセフ・E・スティグリッツなどのノーベル賞受賞経済学者、「破壊的イノベーション」のクレイトン・M・クリステンセン、ベストセラー作家・ジャーナリストのマルコム・グラッドウェルやマイケル・ルイス、ビリオネア起業家のトーマス・M・シーベル、ジム・オニール元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長(英国)など、欧米識者への取材多数。(連絡先:info@misakohida.com)

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