パリの男女が長期休暇に「何もしない」理由 ガッツリ休むのに生産性は日本以上…

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フランス人は仕事の本質を文字通りトラバーユととらえているのです。「ウソだろう?」と、皆さんは思われるでしょう。でも、本当なのです。

100人が100人、仕事や労働は「生きるためにに否応もなく強制される痛苦」と認識しています。組織のための自己犠牲が美徳とされる伝統なんて、まるでありません。「勤労への意欲」とか「仕事の生きがい」をよく口にする日本人にとって、フランス人は極北にある存在かもしれません。

しかし、そう単純化できないのも事実です。19世紀のヨーロッパで、日本文化の斬新で際立つ芸術性を見出し、最初に世界に紹介したのはフランスの芸術家たちです。近代においてジャポネスクが大きな足跡をしるし、今に至る日本文化の尊敬を獲得することができたことを考えると、フランスと日本の国民性には通奏低音をともにする部分があると考えるのです。

観光や帰省に飛び回ったりしない

フランスにも、秀でた才能や適性によって「3度の食事より仕事が好き」な一握りの人はいます。高等教育機関であるグランゼコール出身の「カードル」と呼ばれるエリート層は、給料3倍で馬車馬3頭分、シャカリキでモーレツに働いているようです。

そういった人たちのおかげばかりではなく、一般のフランス人勤労者をひっくるめても、フランスは労働生産性の国際比較でトップのアメリカに次ぐ高水準なのです。就業時間内に業務をコンプリートして効率よく働き、速攻でオフにシフトするからでしょうか。これでは日本人の仕事好きは、たんに職場でのおしゃべり好きだと思われでしまうかもしれませんね。

ヴァカンスが空っぽであり、空っぽがすることもなくボーッとしていることなのは、フランスの現実に適合しています。彼らのヴァカンスは、観光名所や各地のお祭り見物に飛び回ったり、帰省して旧知と遊び歩いたりする、気忙しいものではありません。どこか1箇所に滞在して、ゆったりと「何もしない自由」に浸っているように見えます。

学校時代の夏休み、どっさり宿題出して「夏を制する者は試験を制する」と叱咤激励した先生より、「夏は頭を空っぽにして秋に備えよう」と遊ばせてくれた先生がいい先生だったと思いませんか? 長い休暇は精神や肉体をリフレッシュする効果が高いでしょうし、セカセカした島国の心情をも根底からリセットしてくれるかもしれません。

何をしてもいい自由より、何もしない自由のほうが、きっと個性(personal)を磨くためには大切なのですよ。

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