関西私鉄が「野菜ビジネス」に参入する狙い

高架下での栽培や宅配事業に相次ぎ進出

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野菜工場の内部。野菜が水耕栽培用のパレットに整然と並べられている

長田氏は同社の野菜栽培について「鉄道事業で培ってきた安心・安全に対する取り組みを、食品分野でも活かしていきたいと考えています。

水耕栽培は農薬を使わず、土や虫が付いておらず細菌の付着も少ないため、洗う必要がないほど。土の畑で育てるよりもえぐみが少なく、お子様でもモリモリ食べられると好評です」と語る。

そんな阪神の食品事業は、さらに次の段階へと進んでいる。大物駅近くの高架横には、ビニールハウスが設置されていた。中には、長さ1メートル程の木がずらっと立てかけられた"おなじみの光景"が広がる。「野菜栽培所に続く取り組みとして、昨年11月よりシイタケの原木栽培を始めました。現在は800本の原木を用いて栽培しています」(新規事業推進室・永田浩之氏)。

食品分野への参入が続くことになったが、これは全くの偶然で「野菜栽培所と同じで、高架下活用を考えている時に、シイタケの栽培を思いついたため」という。もっとも、高架下にビニールハウスを設置するのは防火面などで問題があるため、現在は高架下に隣接したスペースに設置されている。

「シイタケの栽培方法は、菌床栽培と原木栽培の2つに分かれます。大量生産が可能な前者に比べ、後者はとても手間がかかるものの、自然の力だけを利用した安心・安全なシイタケを生産できます」(永田氏)。原木栽培では、国産のナラ・クヌギなどの木に穴をあけてシイタケ菌を植え付け、人工的な肥料や農薬を使わずに原木の栄養のみで育てる。一度収穫が終わった原木は1カ月ほど日陰で休ませた後、水につけることでシイタケ生産が可能になる。3年程度、繰り返し使えるという。

「現在はまだ実験段階で、当社の関係するホテルや飲食店に出荷したり、近隣の保育園の子どもたちにシイタケ狩りを楽しんでもらったりしています。温度管理や発芽のタイミングなど、実験で初めてわかったことも活かしながら、今年度は一般販売を目指して安定供給できる体制を整え、『阪神=安全・安心』という企業ブランドを育てたいと思っています」

近鉄は有機人工土壌で野菜栽培

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約5,300㎡もの広さがある「近鉄ふぁーむ花吉野」の農業用ハウスではミディトマトを栽培している

最長の営業路線網を持つ私鉄、近畿日本鉄道も野菜栽培を手がけている。宅地開発を行なっている奈良県大淀町の一角で、2012年夏に「近鉄ふぁーむ花吉野」を開設。現在はグループ会社の近鉄不動産が、植物工場でフリルレタスを、農業用ハウスでミディトマト(中玉トマト)を栽培している。

「ここの植物工場では、水耕栽培ではなくヴェルデナイトと呼ばれる有機人工土壌を使用することで、露地栽培の味に近い農産物を無農薬で生産することが可能になりました。また、農業用ハウスでは特殊フィルムを使用した農法で、従来のものより糖度が高く、しっかりした味のミディトマトが育っています」(近鉄不動産事業開発推進部・鈴木尚也氏)

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