関西私鉄が「野菜ビジネス」に参入する狙い

高架下での栽培や宅配事業に相次ぎ進出

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トマトの栽培には特殊フィルムを使用。作業がしやすいよう、茎が天井から吊られている

農業用ハウスの栽培面積は約5300㎡。ハウスは2棟に分けることで出荷時期をずらすことができ、病気などリスクの低減にもつながるという。

ハウス内は農作業がしやすいように天井から垂らしたヒモでミディトマトの茎を吊り上げている。平成26(2014)年度には約49トンを出荷したほか、近鉄福神駅に隣接する販売所「花吉野くらぶ」では完熟果実を使ったスムージーも提供しており、その爽やかで濃厚な味が好評だという。

「ここ数年で販路も拡大し、身近なスーパーなどでもお買い求めいただけるようになりました。植物工場では無農薬、農業用ハウスでも低農薬で栽培することで、これからも食の安全に貢献していきます」(鈴木氏)

一方、食品の流通事業に注目したのが京阪ホールディングス(当時は京阪電気鉄道、以下同様)だ。30年以上にわたって有機野菜の流通を手がける株式会社ビオ・マーケットを2014年にグループ会社化。関西のほか首都圏や名古屋・広島・福岡にも拠点を置き、「ビオ・マルシェ」ブランドで約8000世帯の会員に宅配サービスを提供している。

「弊社が取り扱う野菜は、原則的にすべて有機JAS認定を受けたもの。栽培中だけでなく、作物を植え付ける2年以上前から、化学合成された肥料や農薬を使用していないという証しです。全国の契約農家と連携し、弊社が仕入れからお届けまで責任を持って行なうことで、食卓に安心で美味しい食品をお届けしています」と、社長の中西基之氏は話す。中西氏は京阪ホールディングスで経営戦略や新規事業推進を担当、ビオ社のグループ会社化と同時に社長へ就任した。

有機野菜総生産量の7%を取り扱う

ところで、なぜ京阪はこの分野に参入したのだろうか。きっかけは、グループ会社である京阪百貨店が有機野菜の取り扱いを始めたことだという。そしてここでもキーワードは「安全・安心」だった。

「新たな事業展開に向けてさまざまな検討を続ける中で、創業以来、環境にやさしい有機農業を営む生産者と共に歩んできたビオ・マーケットの関会長(当時社長・創業者)と、安全で安心な生活を追求する京阪ホールディングスの思いが一致した。お互いにシナジー効果を発揮できる理想的な相手だった」と中西氏はいう。

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ビオ・マーケットの出荷センター。さまざまな野菜を注文に応じてセットしてゆく

2014年度の国内有機野菜総生産量は約4.5万トン。そのうち約7%を同社が取り扱っている。その規模と実績を活かし、大手スーパーや百貨店への商品供給、ネットショップでの直販事業も加速させている。

「有機栽培の野菜やコメ、果物、畜産物などを毎週お届けするだけでなく、これらを原材料としたオリジナルのおせち料理や純米大吟醸酒を企画したり、グループの京阪園芸で有機栽培したバラの苗鉢を母の日ギフト商品化したりするなど、充実をはかっています。さらに衣料品や日用雑貨などでも有機素材にこだわった商品を取り揃え、グループ戦略として自然や環境と共生しながら豊かな生活を送れるオーガニックライフ『BIO STYLE』を広めていきたいと思っています」(中西氏)

長い間、私鉄王国として名を馳せてきた関西の民営鉄道。都市開発や百貨店、ホテルなどに加え、鉄道事業で培ってきた「安全・安心」というイメージを武器に、今後は食品分野など、より生活に密着した事業展開が進みそうだ。

(写真はすべて筆者撮影)

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