高校球児のタバコ、「連帯責任」は時代錯誤か かつては「野球部以外」の不祥事で出場辞退も

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今回の佐賀の事件は、レギュラー選手数名が常習的に喫煙していたことに加え、消防車を出動させ世間を騒がせたという点で問題があった。もしこうした学校を出場させれば、高校野球はこのようにモラルの低い学生や彼らをしっかり指導できない教員たちが関わるスポーツなのかとみなされ、“高校生らしさ”の価値はそれだけ下がることになる。

それでは、出場できなくなる可能性を認識していながら、なぜ高校野球ではこの手の“不祥事”が絶えないのだろうか。

その理由は、野球部という組織は統治(ガバナンス)がきわめて難しいからである。野球は団体競技ながら個人スポーツ的要素を多分に含んでいる。なかでも最も目立つ存在の投手は注目を浴びやすく、ほかの選手との間で扱いに格差が生じやすい。

また、部員の多さもガバナンスを難しくさせる。今回処分を受けた高校の野球部員は70名ほどだったといわれる。高野連のホームページによると、高校野球の平均部員数は41.8名とのこと。監督や部長など数名のスタッフだけでこれだけの数の部員全員に目配りするのは難しいだろう。もし組織統治に失敗すれば、チーム内はバラバラとなり、パフォーマンスは低下する。不祥事も多発することが予想される。

こうした状況に置かれた監督にとって、最も容易なガバナンス手法は“年功制”である。つまり、上級生に権限を与え、下級生を指導させるのである。ところが、野球もスポーツである以上、選手間の能力の差がくっきり現れることから、上級生よりも野球のうまい下級生が出てきたときに問題が生じる。

対処に失敗すると、上級生によるいじめや暴力などの不祥事につながるだろう。そしてそこに親が絡むと、内部告発につながり、もはや野球部内だけの問題ではなくなる。

チームの一体感を高める強豪校の工夫

こうした“年功制”の弊害を除去するには、監督の強い指導力が必要となる。しかし、これも諸刃の剣で、熱心な指導が行き過ぎれば体罰につながる危険性もある。そのあたりのバランスをいかにうまくとるかが監督の腕の見せどころなのである。

この問題に対処するため、近年では3年生の“引退試合”を夏の地方大会前に行い、登録されなかった選手たちの“ガス抜き”を行うケースが増えている。

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