金価格の上昇は、これからがいよいよ本番だ 1ドル100円割れなら中期で「買いのチャンス」

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さて、今後の見通しだが、金の需要には投資目的のほかに、インドや中国を中心とした実需がある。足元の実需は弱く、いま相場を作っているのは欧米の投資マネーだ。そのため投資家の動向によっては目先2~3週間は弱含みとは思うが、下げ幅は深くはない。そして、8月下旬から9月にかけて次の上昇局面を迎えるだろう。

なぜ調整があっても、その先にまた上昇が期待できるのか。これは少し先の話だが、まずブレグジット問題により、英国への投資が控えられ、英国のみならずEU(欧州連合)の実体経済にもマイナスの影響が出てくる。

その余波で中国の景気減速も本格化してくる可能性がある。それを抜きにしても、今年の夏から秋にかけて米国景気に減速感が出たりするとさらなる利上げの先送り観が高まろう。国際的な政治の不安定さも地政学的リスクとして金市場を刺激するだろう。

金の国際相場は、2015年12月につけた1トロイオンス=1045ドルの直近安値から、足元1300ドル台まで回復しているが、条件が重なれば年内に1オンス1450ドルの高値をつけてもおかしくない。

繰り返しになるが、金相場の起爆剤になるかもしれないのが米国の動向だ。現在でも経済見通しが不安定で利上げ見通しが遠ざかっているが、来年以降もし米国経済の悪化が顕著になり、FRBが利下げに走ることにでもなれば、1オンス1900ドル台の天井を突破する可能性も十分にある。金相場を見るうえで、米国の動向は常にチェックしなければならない。

金融政策継続なら、行き着く先は円安と金価格高

金はドルベースで取引が行われるので、とくに日本の投資家にとっては、昨今の円高傾向は向かい風ではある。しかし、この先の円高局面は金購入のよいタイミングとなりそうだ。ドル円の下落(円高)とドル建て金価格の上昇が、並立することが多く判断が難しいと思われるが、100円を割れるような局面は買いのチャンスと思われる。

さらに、日銀がこのまま国債の買い入れを続けて、国債保有残高が500兆円をも超えてくると、いよいよ現下の異次元緩和政策への疑問が噴出してくるだろう。このとき国債価格の乱高下(長期金利の乱高下)とともに為替相場は反転し、いよいよ通貨の信認低下が懸念され、円安が到来しそうだ。

そうなれば、ドル建て金価格の上昇と円安が同時に起こることが予想される。国内投資家にとっては、金への投資が大きく報われるシナリオだ。いずれにしても、金が値上がりする環境は中長期で続く。金相場の復活はまだこれからが本番となる。

(構成:渡辺 拓未)

亀井幸一郎 マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表

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かめい こういちろう / Koichiro Kamei

中央大学法学部卒業。 山一証券に8年間勤務後、日本初のFP会社で投資顧問会社マネー・マネジメント・インスティチュート(MMI)入社。1992年世界的な金の広報・調査機関ワールドゴールドカウンシル(WGC/本部ロンドン)入社。企画調査部長として経済調査、金市場のマーケット分析に従事。1998年独立し分析、評論活動に入る。2002年マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役。「史観と俯瞰」をモットーに金融市場から商品市場、国際情勢まで幅広くウォッチしている。

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