「株を売れ、金を買え」の潮流は本物なのか 英国EU離脱で大変容するマネーの動き

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英国ショックを受けて日々の株価や為替の動きに目が奪われがちだが、相場のプロが刮目するのが金だ。

英国ショックで6月24日の日経平均株価は1万5000円割れ。歴代8位の下落幅を記録した。(撮影:今井康一)

経済アナリストの豊島逸夫氏は、市場に大波乱を巻き起こしたブレグジット(英国のEU離脱)について、「金相場の反応はリーマンショックと真逆。金の世界から見ると今回の危機の質が分かりやすい」と話す。豊島氏は、三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、外資系銀行での外国為替金属ディーラーを経てワールド・ゴールド・カウンシルの日本代表も務めた金の第一人者だ。

リーマンショックのあった2008年は金価格が一時3割近く下がった。この時の値崩れは「ほとんどの投資商品が値下がりし、世界中のファンドや投資家がデリバティブ(金融派生商品)取引で追加証拠金に支払う必要に迫られた。そこで金を売って現金を捻出しなければならなかったため」(豊島氏)。

ブレグジットで大幅な値上がり

一方、今回はどうか。英国の国民投票が結果が判明した6月24日、ニューヨーク金先物相場は前日比100ドル以上高騰し、2年ぶりの高値となる1トロイオンス=1362ドル台をつける場面もあった。そこから1週間以上経っても値崩れは起きていない。豊島氏は現在の金相場について、「底堅い動き。短期的な値上がりではなく、中長期のトレンドとして上昇していくとみられる」と分析する。

週刊東洋経済は7月16日号(11日発売)で『まるごとわかるEU危機』を特集。歴史の転換点ともいえるEU危機の本質を探り、金や株、為替のほか、国際政治へのインパクトまで英国ショックが与える影響について幅広く分析した。

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金相場から見える危機の質の違いについて、豊島氏は「2008年のように金融機関の債務返済能力や市場の流動性が危機的な状態に陥ったわけではなく、今回は経済の長期停滞リスクが顕在化したといえる。国民が抱くエスタブリッシュメント(体制)への反感が移民問題を契機にして表出し、保護主義・孤立主義が強まる中で経済が徐々に縮小していく構図だ」と解説する。

英国のEU離脱はまさにソブリンリスク(国の信用リスク)であり、市場が最も恐れるもの。実際、国民投票以後に英ポンドは大きく売り込まれ、1ポンド=1.3ドルを割り、31年ぶりの安値を更新している。 

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