「株を売れ、金を買え」の潮流は本物なのか 英国EU離脱で大変容するマネーの動き
予期せぬ事態で通貨の信用が低下する一方で、「実物がある金は価値の保蔵手段として優れている。いわば『無国籍通貨』なのでソブリンリスクにさらされない。これまで金の欠点はイールド(金利)を生まないということだったが、マイナス金利が普通になってくるとハイイールド(高利回り)といわれたりもする。相場を長年見てきたがこんな状況は初めてだ」と、豊島氏は驚きを隠さない。
現在、「金買い」に動いている市場のキープレーヤーは主に2つ。「一つは米国の著名投資家であるジョージ・ソロスやスタンレー・ドラッケンミラーら、中長期の視点で資産運用を行うヘッジファンド。ドラッケンミラーは今年3月の時点で、『株を売れ、金を買え』と話していた。彼らは欧州分裂のシナリオを念頭に、5年後にユーロが存在しているのかを疑問視し、現在はフランスやイタリアなどでの離脱ドミノのリスクを注視している。今日買って明日売る人たちではない。長いタームで持つので金価格も底堅くなる」(豊島氏)
市場の「不安感」が上昇材料
もう一つの買い手として注目されるのが各国の中央銀行だ。「IMF(国際通貨基金)のデータを見ると、中央銀行の金買いが増えている。特に外貨準備の多くをドルやユーロが占める新興国勢は、急速に金を買い始めた。こうした動きは通貨に対する不信認と取れる。新興国からするとドルの一極支配は受け入れられないし、かといって人民元も信用できない。ユーロはもはやリスクが高すぎる。それだけに、金は資産運用や外貨準備のヘッジ的な役割を担っていくだろう」というのが豊島氏の見立てだ。
今後の金価格について、豊島氏は「世界情勢の大きな不安感が払拭されない限り、長期的には上昇する。1~2年であれば上値は1400ドル、20年ごろには1700ドルとなるだろう」と予想する。金と米ドルの兌換が停止された1971年のニクソン・ショック以降、「金はおカネにあらず」とされてきた。だがその流れを否定するかのように、金の立ち位置が今見直されているようだ。言い方を変えれば、マネーの流れの変化が金相場の動きに現れているといえる。
ブレグジットは一過性のショックではなく、さまざまな相場の動きに大きなトレンドの変化をもたらす歴史の転換点かもしれない。今求められているのは、目先の株価に一喜一憂せず、世界を俯瞰する視点なのだろう。
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