「投資下手」から卒業できない日本企業の弱み

不況のたびに「大損失計上」の歴史を振り返る

たとえば、自動車メーカーの雄・トヨタ自動車は米国での需要増加を見込み、年間生産能力を1000万台に拡大したところで米国のバブル崩壊に襲われ、余剰生産設備350万台分を抱えることになります。そこで決断したのが、日米欧での100万台分の設備縮小とそれに伴う特損の計上、国内生産3割減産の実行、海外生産に当たる4割の従業員(3万人超)を対象としたワークシェアリングの実施などです。主要市場である米国での販売急減に円高ドル安という為替要因が重なり、トヨタ自動車の2008年度決算は約4370億円の赤字(前年度は約1兆7200億円の黒字)に転落してしまったのです。

国内ではトヨタ自動車の次に大きい日産自動車でも、2008年度の決算は2337億円の赤字(前年度は4822億円の黒字)に転落してしまいました。日産自動車が赤字になるのは、1999年にカルロス・ゴーンがCEOに就任して以来、初めてのこととなりました。優秀なカルロス・ゴーンのような経営者でさえも、世界的な不況にはまったく打つ手がなかったといえるでしょう。

リーマン・ショック後に巨額の損失を出した企業には、電機メーカーであるパナソニックや東芝、NECなどもあります。

パナソニックの2008年度の決算は3789億円の赤字(前期は2818億円と過去最高の黒字)に転げ落ち、国内外の工場を中心に50カ所近い拠点を閉鎖し、正社員を含む1万5000人規模の人員削減に手を付けざるをえませんでした。当初は2008年度決算では3100億円の黒字(2年連続の最高益更新)を目指していたにもかかわらず、世界的な景気失速が大きな誤算となってしまったのです。

パナソニックと同じく、東芝も3435億円の赤字(前期は1274億円の黒字)、NECも2966億円の赤字(前期は227億円の黒字)と厳しい決算になり、それぞれのグループでは多くの拠点の閉鎖に加え、4500人、2万人超もの人員削減を打ち出さざるをえませんでした。オセロゲームのようにいとも簡単に、前期の好決算が過酷なリストラを伴う大赤字決算にひっくり返ってしまったというわけです。

経済の流れを見極めれらないリーダー

このように日本を代表する企業のなかには、赤字になっただけでは済まされず、企業そのものの存続が危うくなったというケースもあります。

たとえば、日立製作所はもともと官僚主義的な経営が上手くいっていなかったところに、リーマン・ショック後の世界的な不況が追い打ちをかけることで、過去最悪の7873億円もの赤字を計上するに至ります。日立が生き残っていくためには、7000人の人員削減に加えて、採算が悪化したグループ企業の再編を断行せざるをえませんでした。インフラ関連の事業を中心とした選択と集中を行い、2009年に19社あった上場子会社グループを、3年後には11社にまで絞り込んでいったのです。

これらの事例のほとんどに当てはまるのは、経済全体を俯瞰せずにタイミングの悪い時期に巨額の投資をしてしまい、事業拡大を進めてしまっていたということです。つまり、これらの経営や投資が失敗した大きな原因は、多くの企業経営者やビジネスリーダーたちが経済の大きな流れを見極められないうえで、漫然と重大な投資の決定をしていたことにあります。

このような失敗を未然に防ぐことができていれば、日本企業はもっと研究開発に資金を注ぎ込むことができ、今でも世界をリードしていた可能性が高いのではないでしょうか。そのように考えると、非常に残念でなりません。

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