駅長「たま」、うめ星電車…和歌山電鐵の10年 赤字脱却へ運賃値上げ、新補助スキーム実施

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一般公開が行われたうめ星電車(右)と2007年に登場したおもちゃ電車(左)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2016年9月号「和歌山電鐵10年のターニングポイント」の一部を抜粋して掲載します。

 

2007年1月、辞令を受け貴志駅長に着任した三毛猫たまは、その主たる任務の「客招き」に抜群の実績を積み上げて2008年に課長級にあたるスーパー駅長、その後も、執行役員、常務執行役員、社長代理と昇進を果たし、2014年に社長代理で貴志川線全駅を統括するウルトラ駅長となった。

この間、和歌山県知事から和歌山県勲功爵、和歌山県観光まねき大明神の称号を与えられた。さらに人と動物が幸せに暮らせる社会の実現のためのたま駅長基金初代総裁も務めた。だが、昨年6月に16歳の高齢で永眠、同月28日に社葬が執り行われ、3000人もの弔問客の中で、最後の辞令により名誉永久駅長の職に任命された。

たま駅長は神様になった

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現在、たま駅長は貴志駅に建立された、たま神社に大明神として祀られており、今でも多くの訪問客を迎えている。伊太祈曽駅に勤めていた部下のニタマスーパー駅長がたまII世を襲名し、貴志駅での勤務に就いた。ニタマもすでにグッズに登場、多くのファンを集め、和歌山市観光特別大使アゼリニャの要職にもある。

同社関係者いわく「たま駅長が神様になって」1年を経た2016年6月、和歌山電鐵は、いちご電車、おもちゃ電車、たま電車に続く水戸岡鋭治氏デザインによる改装車両第4弾として、「うめ星電車」を登場させた。4日、お披露目式典の後、伊太祈曽発16時33分の和歌山行き上り電車から営業運転に就いている。

「うめ星電車」は、貴志川線が1916(大正5)年に山東軽便鉄道として開業してから100周年、そして南海電鉄から和歌山電鐵へと事業が引き継がれてから10年の節目を迎えた記念電車として誕生した。

同社社長、両備グループ代表の小嶋光信氏は、「どのような電車を創ろうかと思案していたところ、水戸岡氏による『ななつ星in九州』を目の当たりにし、感服した。そこで投資額はかなわないがユニークさでは負けないインパクトのある電車を目指し、小さいながら地域鉄道としてキラ星のごとく輝く『うめ星電車』が閃いた」と挨拶した。

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